真・祈りの巫女44
「リョウ、タキにやきもちやいてるの?」
 どちらともなく食事を始めながら、あたしはリョウに言った。
「悪いか? 独り身の神官なんかユーナに近づけたくない。そいつ、変えられないのか?」
「無理よ。名乗り出てくれたのはタキだけど、決めたのは守護の巫女だもん」
「名乗り出たって……。やっぱりそいつユーナのこと……!」
 リョウは本気でそんなことを言っていて、あたしちょっとびっくりしちゃったよ。だって、今は村の非常時で、これから先どんな災厄がくるのかぜんぜん判らないのに、リョウが考えてるのは現状にまったくそぐわないことだったんだもん。
「タキはこんな時にそんなこと考えたりしてないよ。それにタキはあたしの事なんかなんとも思ってないと思うし」
「いや、男の考えることなんか誰だろうが大差ない。ユーナ、誰もいない狭いところでそいつと2人っきりになったりしちゃ、ぜったいダメだからな!」
 最近になって判ってきたことなんだけど、リョウはけっこう嫉妬深いみたい。でも、いつもはこんなにはっきり口に出したりしないんだ。なんとなく機嫌が悪くなって、あたしが気付いてどうしてだろうって考えると、そのときの話題がタキや村の男の人のことだったりする。いつもと違うリョウに戸惑って、だからあたし、他のことはもう何にも考えられなかった。村の災厄のことも、マイラのこともぜんぶ忘れて、リョウをなだめるだけになっちゃったんだ。
「あたしとリョウが恋人だって、タキは知ってるもん。2人でいたって何もないよ。ずいぶん前も書庫で過ごしたけど変なことはぜんぜんなかったわ」
「そいつがユーナにだけ親切なのが気に入らない」
「タキは誰にでも親切よ。あたしにだけじゃないもん」
「ユーナがそうだから心配なんじゃないか。おまえはぜんぜん判ってない。これからオレはまたユーナの傍にいられなくなって、そいつがずっと傍にいるようになって、それがどんなに心配なことか」