真・祈りの巫女27
 神殿の広場での立ち話だったし、宿舎ではカーヤが夕食の支度を終える頃でもあったから、あたしはできるだけ簡潔になるようにリョウに話した。
「運命の巫女はね、近いうちに村に何か大きな出来事が起こるって言ってたわ。家がいくつか壊れるような風景も見えたみたい。小屋のことはあたしも初耳なんだけど……。たぶん、家が壊れて困ってる人を一時的に受け入れるつもりなんだと思う」
 災厄のことをどの程度話していいのか判らなかったから、あたしはリョウにそんな説明しかできなかった。神官がノットたちに多くの説明をしなかったように、あたしもリョウにすべてを話すことはできないんだ。村の未来は簡単に村の人たちに話しちゃいけない。あたしはリョウの婚約者なのに、リョウに秘密を持たなければいけないんだ。
 すごく悲しかった。これからあたしはリョウと結婚するのに、リョウと夫婦になるのに、祈りの巫女のあたしにはリョウに話しちゃいけないことがたくさんあるって気がついたから。
 そんなあたしの悲しい気持ちは、リョウにも伝わってしまったみたいだった。
「そう、か。……村にはそんなことが起こるんだ」
 リョウは少しかがんで、あたしの顔を覗き込むようにして微笑んだ。
「たとえ村に何が起こっても、ユーナのことはオレが守るよ。……前にユーナに言ったよな。オレはずっと昔からユーナを守るって決めてて、ユーナを守るために狩人になって、強い男になったんだ、って」
 覚えてる。忘れたことなんか1度もないよ。だって、リョウは今までだってずっとあたしを守ってくれたんだもん。
「もう1度誓うよ。オレはユーナのことをこれからも守っていく。オレの命が続く限りずっと守っていくって約束するよ。だから、ユーナもオレのことを信じて。なにが起きても、どんなことがあったって、オレがずっとユーナのそばにいるから」
 たぶんリョウには判ってるんだ。あたしが話したよりももっと大変なことが村には起こって、だけどあたしの口からはリョウに話すことができずにいるってこと。
 祈りの巫女のあたしがリョウに秘密を持っていることを、リョウは笑顔で許してくれたんだ。