真・祈りの巫女25
 オミがいなくなったから、あたしはリョウの隣の席に座りなおしながら言った。
「なんなのあれ。ひとのこと言いたい放題言って」
 考え直せとかペチャパイとか、オミったらあたしの結婚を破談にしようと思ってここにきたの?
「あれでもオミなりにユーナのことを心配してるんだよ。いい弟じゃない」
「あたしはペチャパイじゃないもん! それにオミのこといじめたりしてないよ!」
「判ってる。ユーナ、子供相手にそんなに怒らないで。オレはぜんぜん気にしてないから」
 オミがあんまり理不尽だったからあたしは少し腹を立ててたみたい。でも、リョウが言ってくれた言葉で、怒りがすうっとおさまっていった。それで少しだけ冷静に考えることができるようになって、自分の気持ちもちょっと判ってきた。あたし、オミが大人の顔をして見せたり、かと思うと子供のように振舞ったりして、それに振り回されてたんだ。
 リョウはいつも不思議。あたしのことをいちばん判ってて、たった一言であたしの気持ちを楽にしてしまうんだもん。
「そうよね。オミに振り回されるなんて大人気ないわよね。リョウ、オミが変なことを言ってほんとにごめんなさい」
「大丈夫。おかげでオレもだいぶ度胸が据わってきたから」
 あたしがやっと微笑んだからかな。今まで成り行きを見守っていたマティが、少し遠慮がちに会話に入ってきたの。
「ユーナ、オミは最近、オキと一緒に時々来てくれるようになったよ」
「そうなの? ぜんぜん知らなかったわ」
「だろうね。オレも訊かれればユーナやリョウのことを多少は話すよ。男親はやっぱり娘の結婚相手のことは人一倍心配するものだからね。オミもそんなオキのことを知ってるから、自分なりにリョウの気持ちを確かめにきたんだ。……オレにも覚えがあるよ。ニイナと結婚した時にはニイナの父親にさんざん渋られた。もう一晩中頭を下げ続けたもんな。今のオミなんてかわいい方だよ」
 マティは両手を広げて、リョウに意味ありげな苦笑いを向ける。リョウも同じような苦笑いを返したから、あたしもリョウがどうして父さまと話したくないと思ったのか、なんとなく理解したような気がした。