真・祈りの巫女26
 リョウと連れ立って神殿へ帰ると、神殿前の広場の様子が午前中に見た時とはぜんぜん違っていたの。村のきこりたちが森から切り出してきた木を積み上げて、まるで祭りのやぐらの準備をしている時みたい。でも、今年の祭りは秋だからまだずいぶん間があるし、きこりたちの様子も祭りのときとは明らかに違って、華やいだ様子はまったくなかった。あたりはずいぶん暗くなってきてたから、きこりのみんなも今日の作業を終わらせるところだったらしくて、不審に思って見守るあたしたちの横を会釈しながら通り過ぎていった。
「ノット」
 リョウが実家の近所に住むきこりのノットに声をかけた。ノットも帰り支度をしていたところで、あたしたちに気付いて近づいてくる。
「あれ? ユーナにリョウじゃないか。久しぶりだな。今帰りか?」
「ああ。ノットはこんなところでなにしてたんだ? 祭りの準備にはまだ早いだろ?」
「神官たちに頼まれて材木を集めてきたんだよ。ここに仮ごしらえの小屋を建てるらしいぜ」
「……小屋? 何のために小屋なんか」
「詳しいことは何も聞いてないんだ。とりあえず雨露がしのげるだけでかまわないっていうから、たいした代物じゃなさそうだな。だけど数が半端じゃないんだ。なにしろ広場一帯埋め尽くすくらい建てるつもりらしいから。しばらくは村のきこりが総動員で作業に当たることになりそうだぜ。ほんと、神官の考えることはいつもよく判らないよ」
 ノットは苦笑いを浮かべて、あたしやリョウに手を振りながら山道を駆け下りていった。きこりたちがいなくなった広場で、あたしとリョウはちょっと顔を見合わせる。リョウはノットと同じように、今広場に小屋を作る理由が判らないみたい。でも、あたしは判っちゃったの。これから作る小屋はたぶん、村の災厄で非難してきた人たちを受け入れるための施設なんだ、って。
 神殿全体が、来るべき災厄に向けて動き始めたんだ。村の人たちには何も知らせないで。
「ユーナ、……もしかして小屋のことを何か知ってるの?」
 あたしは慎重に言葉を選びながら、リョウに切り出していた。
「……今日ね、巫女たちの会議で、運命の巫女が見る村の未来に変化があったことを教えてもらったの」