真・祈りの巫女24
「オミはいないのか? 好きな女の子とか」
「うん、今はいないよ。仕事してる方がおもしろい」
「そういえばオミは、オキと同じガラス職人になるんだったよな。……オミも好きな女の子ができると判るよ。好きな人がいると、仕事の張り合いがぜんぜん違うんだ」
 あたしからはオミの表情は見えなかったけど、リョウの言うことがよく判らないみたいだった。
「オレはユーナがいいんだ。ほかの、例えば料理が上手だったり、お裁縫がうまかったり、そういう別の女の子じゃ代えられない。ユーナがいるから大変な仕事も頑張れるんだ。だから、オレの方から考え直すなんてことはぜったいにないよ」
 オミはちょっと驚いた風にあたしを振り返って、それからまたリョウを見て、2、3回見比べるような仕草をした。あたしの方は、リョウの言葉に少し赤くなっちゃったよ。なにもあたしの弟に向かってこんなにはっきりこんなこと言わなくてもいいのに、って。
「言っとくけどユーナってペチャパイだぞ」
「オミ! リョウになんてこと ―― 」
「ひょっとしてオミは知らないのか? 世の中にはペチャパイが好きな男もいるんだぞ」
「嘘だ。リョウだっておっきい方がいいに決まってるよ」
「それじゃ、オミはおっぱいが大きくて性格の悪い女の子と、ペチャパイの優しい女の子だったらどっちと結婚したいと思うんだ?」
「うーん、すごい悩む。……でもユーナはそんなに優しくないよ。オレ子供の頃いっぱいユーナにいじめられたもん」
「でもオレのことはいじめたりしないよ。ユーナはオレにはものすごく優しいんだ」
「ふうん」
 オミはもう1度あたしのことを振り返って、それからひょいと席を降りた。
「まいっか。リョウ、ユーナのこと頼むね。神殿まで送ってくれるんだろ?」
 リョウが返事をしてうなずくと、オミはもう振り向きもしないで走り去っていった。