真・祈りの巫女20
「ユーナは食事をしていかないのか?」
「今日は宿舎に帰らなければならないの。カーヤがしたくしてくれてるから。でも明日は一晩泊まって、朝食も食べていけるわ」
「そうか。それは楽しみだな。明日はリョウも夕食をうちで食べるつもりなのかな?」
「リョウは自分の実家で食べるみたい。夕食のあとに時間を見計らってくるって言ってたから。リョウね、今からすごく緊張してるの。父さまはあたしとリョウの結婚を反対したりしないわよね」
 父さまは食前酒を一口だけ口にして、ちょっと複雑な表情をして言った。
「まあ、リョウのことは小さな頃から知ってるからね。仕事もきちんとしているようだし反対する理由もないだろう。とにかく明日リョウの話を聞いてみて、すべてはそれからだな」
 父さまは言葉では反対していなかったけど、なんとなく歯切れが悪くて、あたしが思ってたみたいに手放しで喜んでくれてはいないみたい。あたし、今日せっかく父さまと会えたから、父さまはちゃんと賛成してくれるってリョウに伝えて安心させてあげたかったのに。
 そろそろリョウとの待ち合わせの時間が近づいていたから、あたしはそのまま席を立った。
「それじゃ、あたしこれで行くわね。母さま、明日のことよろしくね」
「ええ、判ったわ。リョウによろしく伝えてちょうだいね」
 母さまの声にうなずいて、あたしがドアを出かかった時、いきなりオミが立ち上がったんだ。
「母さん、オレ、ユーナのこと送ってくる!」
「オミ、もうお夕飯ができるのよ。それに外はまだ明るいわよ」
「リョウがどんな顔してるか見てやりたいんだ。ユーナ、リョウはマティの酒場だろ?」
「え? あ、うん」
「ほら、行くよ」
 そのあと母さまがなにを言っても聞く耳を持たない感じで、オミはあたしを引っ張って外へ連れ出してしまったんだ。