真・祈りの巫女18
 マイラとの久しぶりの歓談はライがいたこともあってあまり落ち着かなくて、あたしは早々にマイラの家を辞すことにした。マイラに抱かれて笑顔で手を振ってくれるライはやっぱりかわいかったから、あたしもなんとなく自分の子供のことを考えちゃったよ。リョウと結婚して、2人の間に子供ができたら、ライのような男の子がいいな、って。リョウに似た男の子ならぜったいかわいいと思うもん。でも、祈りの巫女の仕事をしながら子供を育てるのはやっぱり大変だから、あたしも守護の巫女や運命の巫女のように、最高でも2人くらいしか育てられないと思う。
 そんなことを考えて、ちょっとニヤニヤしながら向かったのは、あたしが生まれ育った実家だった。明日リョウをつれて帰ることを母さまに報告しておかなければいけないから。あたしは実家に泊まるから食事やベッドの用意もお願いしないとならないし、きっとリョウと父さまは飲みながら話に花を咲かせるものね。お酒もたくさん用意してもらって、リョウの緊張を少しでもほぐしてもらうようにするんだ。
 あたしが家につくと、母さまは笑顔で迎えてくれて、オミが作ったというガラスのコップに冷えたお茶を入れてくれた。
「オミはもうこんなものまで作れるようになったのね」
 弟のオミは13歳で、村のほかの子供たちよりも早くガラス職人の修行を始めたの。オミが作ったコップは父さまが作るのと比べたらガラスの厚みも不均一で、よく見るとほんの少し傾いていた。
「父さまね、オミにはまだまだだって言うのだけど、オミがいないところでは誉めてるのよ。オミは本当に真剣に仕事をしてて、その分覚えも早い、って。でも独り立ちはまだできそうにないわね。父さまのように、ほかの村でも売れるような品物を作るには、あと10年はかかるのですって」
 あたしは今まで父さまの仕事のことを詳しく知らなかったのだけど、オミが修行を始めてから、時々母さまが話してくれるようになった。父さまのガラス細工は村で使う分だけじゃなくて、村の外にも輸出されてるんだ。特に動物や植物の形をした文鎮が貴族たちに人気があって、村の人に頼まれた仕事がない時は余分に作ってるんだって。
 母さまは、オミがだんだん一人前になっていくのが、自分のことのように嬉しいみたいだった。