真・祈りの巫女17
 マイラがお茶を入れてくれる間、あたしはライを膝に乗せて、両手をつないで遊んでいた。でもライはすぐに飽きてしまったみたい。床に下ろすと、トコトコ歩いていって、積み木のおもちゃで独り遊びを始めてしまったの。
「あのまま遊ばせておいて大丈夫?」
「目を離さなければ大丈夫よ。ちょっと目を離すとすぐ高いところによじ登るけど。でも、シュウがあのくらいの頃はもっとすごかったのよ。積み木と椅子を使って窓から外に出ようとしたんだから」
「窓って……。窓の下まで椅子を引っ張っていって、その下に積み木を積んで踏み台にしたの?」
「そうよ。だからあたしはほんとに目が離せなかったの。ライにはそこまでの知恵はないみたいね。自分で降りられなくなるほど高いところには登らないから、けっこう慎重みたい。シュウよりはずいぶん安心して見ていられるわ」
 ライはこんなに小さな男の子なのに、もうシュウとは違った個性があるんだ。たぶんあたりまえのことなのにあたしは驚いていた。
「シュウはやんちゃな子だったのね。あたしは優しかったシュウしか覚えてないわ」
「あたしもそうよ。ずっと忘れていたことも、ライを育てているうちに少しずつ思い出してきたの。こんな風に穏やかな気持ちでシュウを思い出せるなんて、以前は思いもしなかった。だからライが生まれてあたしは本当に幸せなのよ」
 マイラはすごく自然な表情でそう言ったの。あたしはまだほんの少しだけシュウの命に責任を感じていて、マイラにはいつもどこかで負い目を持っていたけれど、そんな気持ちは持っていちゃいけないものなんだ、って、そう思った。だって、マイラは今本当に幸せなんだもん。ライを育てて、シュウを思い出して、でもそれでも幸せだって言えるんだもん。
「ユーナはどうなの? あたしは早くユーナが子供を産んで、その子をライの友達にしたいと思ってるのよ」
 さりげなく、でも突然マイラがそんなことを言ったから、あたしはちょっとだけ顔を赤くしてしまったの。
「もう、マイラったら……。あたしはまだ結婚もしてないのよ」
「でももうすぐでしょう? 早ければ来年の今ごろには、ユーナも母親になってるわ」
 マイラの言葉に照れながら、あたしはリョウとのことをマイラに話したんだ。