真・祈りの巫女12
「どうかしたの? 確か明後日の午前中は特別な予定は何もなかったわよね」
 そう、どちらにともなく言うと、運命の巫女は作ったような笑顔であたしに微笑んだ。
「ちょっと気になることがあるの。もうすぐ聖櫃の巫女と神託の巫女がくると思うから、その時一緒に話すわね」
 運命の巫女は村の未来を予言するから、村の未来に何か不安なものを見たのかもしれない。でも、運命の巫女がそう言って話を終わらせてしまったから、あたしはそれ以上何も訊けなかった。あたしは黙り込んでしまったけど、守護の巫女と運命の巫女は自分たちが結婚した時の思い出話なんかを始めてしまったの。その様子はさっきまでとぜんぜん変わらないくらい明るかったから、しだいにあたしも巻き込まれて笑顔になっていった。
 やがて聖櫃の巫女と神託の巫女が相次いでやってきて、ノーラがお茶を入れて宿舎を出て行ってから、恒例の会議が始まっていた。議長は守護の巫女で、だから最初に口を切ったのも守護の巫女だった。
「それじゃ、始めるわね。まずはいつものこの村の未来について。運命の巫女が見る未来が少し変化したわ。詳しいことは運命の巫女から直接話した方がいいわね」
 このところずっと、運命の巫女には未来がきちんと見えていなかった。あたしが2年前に初めてこの話を聞いたとき守護の巫女が言ってたの。運命の巫女に未来が見えないのは、未来がまだ決まってないからなんだって。そして、その未来はあたし、祈りの巫女が握っているんだ、って。視線を運命の巫女に移しながら、あたしは少しドキドキしてきていた。
「前から話していた通り、私にはずっとこの村の未来が見えなかったわ。でも、この間の会議のあとからだんだん少しずつ見え始めてきたの。まだここで詳しく話せるほどはっきりとは見えてないけれど、1つだけ言えることがある。……近いうちに何かの災厄がこの村を襲うわ。そして、たくさんの人が死ぬの」
 あたしは少し視線をずらして、正面にいた聖櫃の巫女を見遣った。聖櫃の巫女もあたしを見て、それからあたしの隣にいた神託の巫女を見たの。聖櫃の巫女につられてあたしも神託の巫女を振り返った。そうだ、2年前のあの時神託の巫女は、たくさんの人間が同じ時期に死を迎える予言をしていたんだ。