真・祈りの巫女11
 守護の巫女と運命の巫女は年が近いせいか5人の中ではいちばん仲がいいの。確かほんのちょっとだけ守護の巫女が年上で、子供も2人ずついて、それだけ見るとよく似てそうだけど印象がぜんぜん違うんだ。守護の巫女は女性にしてはすごく背が高くて、平均的な男性と同じくらいあって堂々としてる。でも運命の巫女は、割に小柄なあたしよりも更に小さくて、普通にしてると判らないけどちょっとだけ片足を引きずるような感じで歩くの。そんな2人はふだんでも仲がよくて、たまにあたしが守護の巫女に用事があって宿舎を訪れると、2人でお茶を飲みながら世間話をしてたりする。居間にはもう1人守護の巫女の世話係をしているノーラがいて、すぐにテーブルにお茶を入れてくれたから、あたしも自分の席に座った。
「ありがとう、ノーラ」
「祈りの巫女、そろそろ結婚式も近いわよね。神殿にまだ予約が入ってないようだけどちゃんと進んでるの?」
 あたし、会議の時によくリョウとのことも話していたから、守護の巫女も運命の巫女もあたしが秋に結婚するって知ってるんだ。この前の会議の時は何も答えられなかったから、みんなを心配させちゃってたけど、そう守護の巫女に訊かれてあたしは思わず笑みがこぼれた。
「明日リョウがあたしの両親に正式に話をしてくれることになったの。あたしにも立ち会って欲しいって、昨日リョウが話してくれたわ」
「そう、それはよかったわね。おめでとう、祈りの巫女」
「おめでとう。リョウがその試練を乗り越えたらもうすぐね。安心したわ」
 2人ともそう言ってあたしを祝福してくれる。あたしも笑顔でお礼を言ったけど、運命の巫女が言った試練て言葉はちょっとだけ引っかかった。まあでも、2人ともあたしの父さまが優しいってことを知らないから、そのまま聞き流すことにしたの。
「それじゃ、祈りの巫女は明日は実家に泊まりるのね。明後日は帰ってくるのでしょう?」
「ええ、一応そのつもりだけど。……何かあるの?」
 運命の巫女と守護の巫女はちょっとだけ顔を見合わせて表情を曇らせた。その2人の視線が何かを隠しているように見えて、あたしは知らずに身構えてしまっていた。