真・祈りの巫女9
 巫女は他の人よりも少しだけ結婚が遅くなる傾向があるけど、それにしてもカーヤが誰とも付き合わないのは不思議だった。カーヤに恋人がいないのはあたしがいちばんよく知ってるけど、でもけっしてモテない訳じゃないのよね。女性のあたしから見てもすごく素敵だと思うし、優しくて料理も上手だから、カーヤを好きな男の人はいっぱいいると思う。実際あたしも2、3回訊かれたことがあるんだ。神殿によく出入りしている男の人とか、独身の神官なんかに、カーヤは恋人いないの?って。
「ザンは? 最近あんまり仲良くしてないの?」
「……うん、この間ちょっとそんなこと言われたんだけど、それからなんとなく気まずくなっちゃったみたい」
「どうして? ザンはいい人よ。誰にでも分け隔てなく親切だし」
「なんとなく、かな。この人だ!って思えないの。嫌いじゃないのよ。でも、結婚したい人じゃないの」
 あたしにはあんまりよく判らなかった。あたしはずっとリョウのことばかり見ていて、結婚するのはリョウ以外には考えられなかったから、カーヤのような気持ちにはなったことがないんだ。
 カーヤはリョウのことであんなに泣いてた。リョウのことはもう引きずってないって言ってたから、それは本当だと思う。でも、カーヤはあんなに真剣に人を好きになることができるんだもん。もう1度本気で恋をしたら、きっとすごく幸せな結婚ができるはずなんだ。
 たぶん、カーヤはまだ出会ってないんだ。カーヤの両親はカーヤが誰と結婚するのかちゃんと知ってるから、何も言わずに静かにその時を待ってるのかもしれない。
 カーヤはこれからどんな恋をするんだろう。あたしはそれを見届けることができるのかな。
「ユーナは? そろそろリョウとのこと、考えてるの?」
 そう訊かれたから、あたしはさっきのリョウとのことをカーヤに話したの。
「実はね、明後日リョウがあたしの両親に会いにくるの。リョウはあたしも一緒にいて欲しいんだって」
「ふうん、それじゃリョウったら、今からすごく緊張してるでしょう。大変そうね」
 カーヤが含み笑いを浮かべてそう言ったから、あたしはまた更に不思議が深まっちゃったんだ。