真・祈りの巫女8
 なんとなくリョウと離れがたくて、でもそろそろカーヤが夕食を作り終わる頃だったから、あたしはいつものように笑顔でリョウに別れを告げて宿舎に帰り着いていた。宿舎ではもうカーヤが食卓の準備を完全に整えてあたしを待っていた。もしかしたらいつもよりもちょっとだけ遅くなっちゃったのかもしれない。でも、カーヤはそんなことは一言も言わないで、仕事を終えたあたしをねぎらってくれた。
「ユーナ、お腹空いたでしょう? 今日はチャーハンにニンニクと唐辛子をたっぷりきかせてみたの。辛いけどおいしいわよ」
 カーヤが作ってくれたチャーハンは、暑さでばてた身体が生き返るみたい。見た目も真っ赤で辛いのにすごくおいしかった。カーヤはあたしより2歳年上の18歳で、あたしが祈りの巫女になってからずっと世話係をしてくれている。その間にもどんどん料理の腕を上げていて、もういつ結婚してもいいと思うのに、まだカーヤは独身なんだ。前にリョウのことを好きだったけど、でもそのことはとっくに吹っ切れてるはずだから、カーヤが結婚しないのがあたしにはすごく不思議な気がしていたの。
 食事を頬張りながら、あたしは思い出してカーヤに話し掛けていた。
「そう、あのね、あたし明後日実家に一晩だけ泊まろうと思ってるの。カーヤもこのところ帰ってないでしょう? よかったら一緒に帰らない?」
 あたしが宿舎にいるときは、世話係のカーヤもなかなか家に帰れない。もちろんカーヤがいつ帰ってもあたしはかまわなかったけど、責任感の強いカーヤはあたしの世話を放って1人で帰ることができないんだ。
 あたしが言うと、カーヤはちょっと視線を泳がせて、考えているように見えた。
「……そうね。あたしも帰ろうかな。久しぶりに顔を見せておかないとみんなに忘れられちゃいそうだし」
「またそんなこと言ってる。カーヤの家族はカーヤのことを忘れたりしないわ」
「そうでもないのよ。母さまも父さまも、あたしのことはあんまり心配してくれないの。だって、あたしもう18歳になるのに、恋人がいるのかどうかもぜんぜん訊かれないんだもの。きっとあたしが売れ残ってもいいと思ってるのね」
 そう、カーヤは冗談めかして笑いながら言った。だからあたしも笑顔で答えたけど、やっぱりちょっとだけ心配になったの。だって、女の子の18歳っていったら結婚適齢期ギリギリで、それ以上で独身だと売れ残りだって言われるんだもん。