真・祈りの巫女6
 リョウも忘れてなかったんだ。やっとあたし、リョウのお嫁さんになれるんだ。
「変わってなんかないよ! だって、あたしがずっと好きだったんだもん。毎日毎日、あと何日でリョウと結婚できるって、数えてたのよ。リョウがちゃんと覚えててくれてるのか、ちょっと不安だったんだから。リョウの誕生日までもうあと2ヶ月しかないのにリョウはぜんぜん話してくれないんだもん」
 リョウは視線を戻して、ほっとしたように微笑んで、あたしがまだリョウの笑顔にドキドキしていると、そっと近づいてきてあたしを抱きしめた。リョウの腕が大好き。リョウの匂いに包まれて、愛されているのが幸せで、目眩がしそう。
「ごめんな、不安にさせて。……でもよかった。ユーナに結婚したくないって言われたらどうしようかと思った」
「……そんなことぜったい言わないもん。……ねえ、リョウ。神殿に結婚式の予約を入れないといけないの。何日にするの?」
「それはね、2人だけじゃ決められない。1度ユーナの両親に会って、ちゃんと話をしてからだね」
 なんだか不思議に思って、あたしはリョウの腕から抜け出して、顔を覗き込んだ。
「父さまも母さまも、あたしがリョウと結婚するのは判ってるわ。リョウのことは2人ともすごくよく知ってるし、ぜったい反対しないと思うの。それなのにわざわざあたしが帰った時に話をするの?」
「変だと思う? だけどそういうものなんだと思って、ユーナも付き合ってくれ。オレもできれば避けて通りたいところだけど、こればっかりはそういう訳にもいかないから。先のことはぜんぶ、オレがそいつをクリアしてからだな」
 リョウが父さまに会うのを嫌がるなんて、あたしはすごく不思議で、再び歩き始めてからも違和感は抜けなかった。だって、リョウって昔から父さまや母さまにすごく信頼されてて、あたしがリョウのところへ行くって言えばぜったい反対されなかったもん。父さまはリョウとの結婚を反対したりしないよ。リョウはもう立派な一人前の狩人だし、あたしだって結婚してぜんぜんおかしくない年になったんだから。
 あたしが15歳になったとき、リョウは婚約のしるしにって、職人のカチが北カザムの角と毛皮で作った髪飾りをプレゼントしてくれた。初めて父さまに見せた時、父さまは「リョウも一人前になったな」って、あたしの婚約をすごく喜んでくれたんだ。