真・祈りの巫女4
「マティ、オレにもお茶を1杯くれるかな」
「はいよ。酒瓶も持っていくだろ?」
「ありがとう。いつも悪いね」
 リョウは何日かに1回、お酒の瓶を朝マティに預けていく。夕方マティがいっぱいにしてくれた瓶を持って帰るのが習慣になってるんだ。あたしはリョウの横顔を見ながら、マティが入れてくれたお茶をリョウが1口飲むのを待っていた。人心地ついたリョウが振り返って微笑みかけてくれる。それまで待って、あたしはいつものようにリョウに話し掛けた。
「今日ね、あたしサネ橋の向こうまで行ってきたの。マーサの娘のレナがおめでたなのよ。レナと話をしてね、子供が無事に生まれるように祈る約束をしたの」
「へえ、マーサの孫が生まれるんだ。それは楽しみだね」
「うん。でも今はまだレナもつわりがひどくて大変みたい。マーサも心配してたけど、思ったほど落ち込んでなかったわ。パクが優しくしてくれるんだって。なんかノロケ話を聞きに行ったみたい ―― 」
 リョウがお茶を1杯飲む間、あたしは今日あった出来事をリョウに話していた。リョウはいつも微笑みながらあたしの話を聞いてくれる。少しだけ話して、あたりが暗くなり始める頃、あたしとリョウはマティにお別れを言ってお店を出た。
 ずっと、毎日、あたしはリョウとマティの店で待ち合わせて、神殿までの帰り道を歩いていく。あたしが村に降りるようになってから、それがリョウとあたしのデートになっていた。その日あった出来事を話したり、明日の予定を話したりしていると、神殿までの距離がすごく短く感じるの。神殿への山道に入る頃にはリョウと別れるのが寂しくなる。あたしは神殿の宿舎に帰って、リョウは神殿から少し山を降りた森の家へ帰ってしまうから。
 ねえ、リョウ。あたし、16歳になったよ。リョウが20歳になるまであと2ヶ月。もうすぐあたし、リョウのお嫁さんになれるよ。
 リョウは覚えているよね。あたしが14歳の時の約束。
 夏が過ぎて、秋がやってくる頃、あたしはリョウと結婚するんだ。