真・祈りの巫女1
「 ―― 祈るが良い。祈りは天を動かし、地を揺るがし、人をいざなう。祈りは次元を超え、時を超える。そなたがこの世の滅びを食い止めようと願うのならば、祈る事こそ唯一の道。祈りの巫女ユーナよ。その祈りを天に地に、そして人に響かせよ。祈りは力となり、必ずやこの世を救いたもう……」
 守りの長老はそれきり口を閉ざして、もはや語ろうとはしなかった。長老と向かいあわせに座ったあたしは、更なる助言をその表情から読み取ろうと心を澄ました。でも、長老のそのしわがれた顔からは、わずかな表情さえも浮かんではこない。あたしは、つぶやくように守りの長老の言葉を反芻した。
「祈りは天を動かし、人をいざなう……」
 生まれてから16年の間、あたしは祈ることしかしてこなかった。祈りはあたしのすべてだった。今この時、あたしに祈る以外の何が出来ただろう。滅びに向かうこの世界に、たった1つ残された道が祈ることなのは、あたしの幸運なのかもしれなかった。
「守りの長老、あたしの祈りをどうか見届けてください。あたしはこの時代に生まれたたった1人の祈りの巫女。必ずや天を動かし、次元を時を超えてみせましょう」
 あたしは、わずかに残された命を、自らの内に向けた。そうして心の炎を燃やして、祈りの力に変える。今となってはもう何に祈るのかも判らない。でも、確かに手応えのある何かに向かって、あたしは祈りつづけた。

 あたしは、祈りつづけていた。