あとがき2
 黒澤は4歳まで、埼玉県内の今よりも少し東京に近い市に住んでいました。
 その頃、よく遊んでいた1つ年下のシュウイチ君と、同じアパートに住んでいた幾つか年上のリョウ君という男の子がいまして。
 名前を見て既にお判りと思いますが、この2人がうちのシュウとリョウのモデルだったりします。
 なにしろ4歳の時までの思い出しかありませんから、性格などはぜんぜん判らないのですが、名前だけは彼らからいただいたんですね。

 今回のお話のテーマには「大人になる」というのがあったのですが、ユーナは前回13歳の誕生日で祈りの巫女の称号を受けたので、今回のお話ではずっと1人の大人として扱われています。
 でも、人間て周りに大人として扱われるようになってから、実際に自分が大人になったと自覚できるまで、時間がかかるものなんですよね。
 ユーナの周りにいる人たちはそれぞれ自分が通ってきた道ですから、大人として扱いながらも時々手を差し伸べて、ユーナが成長するのをゆっくりと見守っています。
 そんな周りのあたたかい視線を受けてのんびり成長するユーナの心の揺れも表現したかったのですが、そのあたりはうまく書けたかどうか、ちょっと微妙だったりしますね(笑)
 今回はむしろリョウの方が成長がはっきり見えたのではないでしょうか。
 このお話の中で、リョウは狩人としての責任の意味を見出しました。
 彼はとても若者らしい心で夏の北カザムを狩りたくないと思っていましたが、村人や家族のために背負わなければならない責任を感じて、夏の北カザム狩りに挑みます。
 そして、北カザムを狩ったことで、改めてまた1つ大人になった自分を自覚したんですね。
 リョウが考える大人になるためのプロセスの第1段階は「自分の仕事にプライドが持てること」で、これは前作「祈りの巫女」でリョウ自身が語っているとおりです。
 でも、その次の段階は「プライドを捨てる勇気が持てること」だと気がついたんですよ。
 という訳で、黒澤はユーナを成長させることにはちょいと失敗しましたが、その代わりリョウを成長させることには成功したような気がしているところです。
 ユーナがこの境地に達するまでは、まだしばらくかかりそうですね。


 明日もあとがきの続きを配信します。
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 では、また明日。