2002 10/30 19:18
Category : 日記
山の道は日が沈むのもすごく早くて、それほど時間が経ってる訳じゃないのに、足元はもう見えなくなり始めていた。リョウがあたしの手を引いて、転ばないように気を遣いながらゆっくり歩いてくれる。これがあたしだけのリョウだよ。いつかあたしはリョウと結婚して、毎日この道を神殿に通うようになるんだ。
「あたし、リョウの家に帰るようになるのね。毎日神殿の宿舎に行って、でも帰る家はリョウの家になるの」
このときリョウは振り返らなかったけど、つないだ手を握り締めることで答えてくれた。
「早くその日がくるといいな。……リョウ、いつ結婚するの?」
リョウは足を止めて、振り返って笑ってくれた。その笑顔にドキッとする。あたし、リョウの笑顔にしばらく慣れそうにないよ。
「……ユーナが16歳になって、オレが20歳になったら」
あたしが16歳になって、リョウが20歳になったら ――
「2年後の……、秋……?」
「そう。2年後の秋。それ以上は待たないから」
あたし、あと2年と少しでリョウのお嫁さんになれるんだ! 早くその時がくればいいのに。
「ユーナ、今、泣いてない?」
リョウがちょっと困ったようにそう言って、あたしは言われた言葉を不思議に思ったけど、今は泣いてはいなかったから素直にうなずいた。そうしたら、リョウはゆっくり顔を近づけてきて、そっとキスしてくれたの。胸の中がかっと熱くなって、心臓がドキドキして、あんまり幸せでめまいがしそうだった。
「……きっと、あと2年経ったら、ユーナはもっときれいになってるだろうな」
リョウが顔を赤くしながらそう言って、あたしはちょっと吹き出すように笑った。リョウだって今よりずっとかっこよくなってるよ。あたし、頑張るから。リョウのお嫁さんにふさわしくなれるように。
みんなに頼りにされる祈りの巫女になって、お料理もお裁縫も誰にも負けないように練習して、リョウが自慢に思える女性になるんだ。
―― リョウが今までくれた優しさを、これから少しずつ返していけるように。
そんなあたしの想いは、リョウの微笑みに背中を押されて、いつか現実になるような気がした。
了
「あたし、リョウの家に帰るようになるのね。毎日神殿の宿舎に行って、でも帰る家はリョウの家になるの」
このときリョウは振り返らなかったけど、つないだ手を握り締めることで答えてくれた。
「早くその日がくるといいな。……リョウ、いつ結婚するの?」
リョウは足を止めて、振り返って笑ってくれた。その笑顔にドキッとする。あたし、リョウの笑顔にしばらく慣れそうにないよ。
「……ユーナが16歳になって、オレが20歳になったら」
あたしが16歳になって、リョウが20歳になったら ――
「2年後の……、秋……?」
「そう。2年後の秋。それ以上は待たないから」
あたし、あと2年と少しでリョウのお嫁さんになれるんだ! 早くその時がくればいいのに。
「ユーナ、今、泣いてない?」
リョウがちょっと困ったようにそう言って、あたしは言われた言葉を不思議に思ったけど、今は泣いてはいなかったから素直にうなずいた。そうしたら、リョウはゆっくり顔を近づけてきて、そっとキスしてくれたの。胸の中がかっと熱くなって、心臓がドキドキして、あんまり幸せでめまいがしそうだった。
「……きっと、あと2年経ったら、ユーナはもっときれいになってるだろうな」
リョウが顔を赤くしながらそう言って、あたしはちょっと吹き出すように笑った。リョウだって今よりずっとかっこよくなってるよ。あたし、頑張るから。リョウのお嫁さんにふさわしくなれるように。
みんなに頼りにされる祈りの巫女になって、お料理もお裁縫も誰にも負けないように練習して、リョウが自慢に思える女性になるんだ。
―― リョウが今までくれた優しさを、これから少しずつ返していけるように。
そんなあたしの想いは、リョウの微笑みに背中を押されて、いつか現実になるような気がした。
了