続・祈りの巫女99
 肩を抱いたリョウの息はすごく近かった。さっき、リョウはその唇であたしにキスしてくれたんだ。それが初めて実感として押し寄せてきたみたいで、あたしは急にリョウに肩を抱かれているのがすごく恥ずかしい気がしたの。リョウがこんな風に肩を抱いてくれるの、今までだって何回もあったのに。優しく肩を抱いてくれて、頭をなでてくれて、そのときあたしはすごく元気が出てきたんだ。
 なんか、今までとはぜんぜん違う世界にいるみたい。リョウの手の感触も、まるで初めて触れているみたい。こんな風に思えるのはあたしが変なの? リョウは今どんなことを思ってるの?
「……小さな女の子だって言ってたよ。あたしが他の人と結婚したら、あたしの家族も守ってくれるんだ、って」
 初めてのリョウに戸惑ってしまって、あたしはそんな返事をした。
「それは嘘。オレ、ユーナのことがずっと好きだった。ユーナがシュウのことを好きだったときも、シュウが死んでシュウのことを忘れてた時も、オレはユーナのことしか見てなかった。ずっとユーナと結婚したかった」
 嘘、ついてたの? リョウ。あたしがリョウのこの言葉で、すごく悲しい気持ちになってたのに。
「小さな女の子だなんて最初から思ってない。ユーナのことは、オレはずっと1人の女として見てた。オレが男だから、ユーナは女なんだって。だけどそんなこと言ったらユーナが怯えそうだったからね。いつも、顔を見るたびにオレはユーナにキスしたくて、でもユーナがオレのことをそう思ってくれてなかったら逃げられちゃうだけだし」
「……そんなの、知ってたらあたしこんなに悩まなかったよ」
「それはオレも同じ。ユーナが悩んでくれてるって知ってたら、夜中に大酒飲んで壁に頭打ちつけながら絶叫したりしなかった」
 そう、リョウが言ったその姿を思い浮かべて、あたし思わず吹き出していたの。リョウはそんなことしてたの? 確かにリョウの家のまわりには誰の家もないから、夜中どんなに絶叫しても誰にも笑われたりしないけど。
 リョウは、そんなちょっと恥ずかしい自分も、あたしに見せていいって思ってくれたんだ。
「それで? オレと結婚してくれる?」
 耳元でリョウにささやかれて、あたしは自然にうなずいていた。