続・祈りの巫女97
 リョウの笑顔にドキドキする。やっぱりあたし、リョウのことが好きだよ。あたしはリョウを諦めなければいけないの? リョウにとってあたしは小さな女の子のままで、だからリョウが誰かと恋して結婚するのを黙って見ているしかないの?
 泣きたくないのに、リョウの笑顔を見ていたらすごく悲しくなった。泣いてもリョウを困らせるだけなのに。リョウ、もういいから早く言ってよ。どんな言い方でもいいよ。あたしのことはただの近所の女の子で、好きになることはできなかった、って。
 頬に涙が落ちた時、リョウは一瞬のうちに表情を曇らせて、ちょっと苦しそうな顔を見せた。そして次の瞬間、リョウはいきなりあたしの腕を引いて、大きな身体に包み込むようにあたしを抱きしめたんだ。
「ユーナ、ユーナ……」
 耳元で聞こえたリョウの声はすごく苦しそうだった。抱きしめられたあたしはもちろんびっくりして、しばらく呼吸が止まってしまった。リョウの胸に力いっぱい押し付けられたあたしも苦しかった。リョウ、いったいどうしたの?
「……いつもそうだユーナは。オレが、いったいどんな気持ちでおまえのこと見てるかなんてぜんぜん気づかないで、あんなところであっさりキスしてみたり、あんなこと言って……」
 ……リョウ、怒ってるの? いったい何を怒ってるの? ……頭がボーっとして、なんだかちゃんと考えられないよ。リョウの匂いがする。息が苦しくて、身体の力が抜けていくみたい。
「どうしてこんなタイミングで泣くんだよ! この ―― 」
  ―― 気がついたとき、あたしの唇はリョウの唇にふさがれてた。
 びっくりして、息が苦しくて、無言のままあたしは少し抵抗した。だって、あたし今の今まで泣いてて、だから鼻で息できなかったの。口がふさがれちゃうともうどうしようもなくて、しまいには片手でリョウの胸を叩いて必死でリョウに教えようとした。リョウはすぐには気づいてくれようとしなくて、でも抵抗を続けていたら、やっとリョウはキスを止めてくれたんだ。
 身体が自由になったあたしは、何度も大きく呼吸をした。リョウはあたしを抱きしめるのもやめていて、やっとあたしが顔を上げた時には、また背を向けて歩き始めてたの。