続・祈りの巫女87
 カーヤとランドに挟まれて、あたしはなんだか2人に責められているような気がしてきたの。あたし、確かにリョウのこと、少し怒ってた。でもあたしが逃げたのは違うんだもん。あたしが怒ってたことなんか、リョウの顔を見たら全部吹き飛んでしまってたの。
「……リョウ、おかしいよ。変だよ。なんでリョウはあたしに笑いかけるの? あんな顔で笑ってるの、あたしのリョウじゃないよ」
 あたしはまだ顔を上げることができなかったけど、でも気配で2人が顔を見合わせたのが判った。
「なんでリョウはあんなにキラキラしてるの? どうしてこんなにドキドキするの? すごく眩しくて、あんなリョウずっとなんて見てられないよ。どうしてランドは平気なの? あたしだったら、あんなリョウと一緒に山をのぼってなんかぜったいこられないよ」
 あたしが一気にそう言ったあと、ランドは身体の力を抜いて、ふうっと、大きく溜息をついたみたいだった。それから少し時間があって、今度はもっとゆっくりとした口調で、ランドが話し始めた。
「それはな、ユーナ。リョウがおかしいんじゃない。おまえの方がおかしいんだ」
 そう、ランドの言葉を聞いて、あたしはほんの少しだけ顔を上げかけた。
「おまえは本当に大バカだな。あんな態度とったら、誰だっておまえがリョウを怒ってると思うじゃないか。おまえが逃げちまったから、リョウはユーナが自分を怒ってるって、落ち込んでたぞ。いいか、ユーナ。自分がしたことの責任は自分で取れよ。リョウは今日と明日はずっと家にいる。オレが聞いたんだから間違いない。おまえは今日か明日のうちに自分からリョウの家に行って謝れ。いいな!」
 そのままランドはベッドから立ち上がって、宿舎を出て行った。玄関を出る時に一言、
「あー、ばかばかしい。くるんじゃなかった」
と呟いて。ランドの気配がなくなったから、ようやくあたしも顔を上げることができた。見上げるとカーヤがあたしを見つめていて、その表情には苦笑いが浮かんでいたんだ。
「セーラの恋愛では鋭くて驚いたけど、ユーナは自分のこととなるとからっきしなのね。ランドの言うとおりよ。本当にばかばかしいわ」
「……カーヤも、あたしがおかしいんだと思うの? あたしって大バカなの?」
「ええ、そう思うわ。いいからリョウのところへ行ってらっしゃいよ。今のユーナの気持ちを話したら、答えはリョウが教えてくれるわ」