続・祈りの巫女83
 もしも今リョウと会ったら、あたしはどんな顔でリョウを迎えるんだろう。リョウはどんな顔をするんだろう。あたしはいつもリョウとどんな顔で会っていたの? たった8日間離れてただけなのに、自分がどんな気持ちでリョウと会ってたのか判らなくなっちゃったよ。
「ユーナの言ってることがよく判らないわ。リョウの事が好きかどうかが判らなくなったの?」
「ううん、リョウのことは好きなの。それはほんとよ。でも……カーヤにうまく説明できない。ごめんなさい」
 カーヤはそれ以上訊かないでいてくれて、食事を始めたから、あたしもカーヤの朝食に匙をつけた。
 食後、あたしは途中になっていた掃除を最後まで終わらせて、神殿の書庫に新しい本を借りに行った。書庫にはいつものように何人かの神官がいて、その場にタキはいなかったのだけど、本を借りて帰ろうとしたらちょうど入ってきたタキと顔を合わせることになったの。あたしは昨日まですっかりタキにお世話になっていたから、偶然会えたのを幸いにもう1度お礼を言ったんだ。
「おはよう、タキ。セーラの日記のことでは本当にありがとう」
「いいえ、どういたしまして。オレもいろいろ勉強になったよ。今日は? 3代目の物語を借りにきたの?」
「ええ、そうなの」
「祈りの巫女は勉強熱心だね。オレも見習わないと。……ところで、狩人のリョウは祈りの巫女の友達だよね」
 あたし、思いがけずリョウの名前を聞いて、ちょっと驚いてしまったの。まさかここでリョウの名前が出るとは思わなかったから。
「そうよ。リョウがどうしたの?」
「やっぱりそうだ。そうじゃないかと思ってたんだ。実は今朝リョウが北カザムの毛皮を取ってきてね。これから引き取りに行くところなんだ。もしも祈りの巫女が知らなかったら教えてあげようと思ってたんだ」
「ランドが知らせにきてくれたから知ってたわ。ありがとう。でも、どうしてタキが取りに行くの?」
「他の動物は狩人の自由にしていいんだけど、北カザムの毛皮だけは神殿の管轄なんだ。村の入口に関所があってね、狩人は山へ出る時には必ず届けることになってる。何なら祈りの巫女も一緒に行ってみるかい? 神殿のいろいろな手続きを見るのも勉強になると思うよ」
 そうか、タキはリョウが北の山へ行っているって、最初から知ってたんだ。