続・祈りの巫女81
 リョウが、帰ってきたの? 10日よりも早く、しかも、ランドが大猟だって言うくらいの北カザム3頭を仕留めて。
 ランドの言葉を聞いて、それが嘘じゃないんだってことが判っても、あたしはなんだか実感がぜんぜん湧かなかった。リョウは昨日の夜にはもう帰ってたんだ。あたしが、ベッドに入ってからもなかなか寝付けないでいた頃に。リョウは本当に狩りに行ってたんだ。あたしを嫌いになったから、村を出て行くことに決めたんじゃなかったんだ。
「どうするんだ? 会いに行くんだったらさっさと支度しろよ。オレが一緒に連れてってやるから」
 ランドがそう言った頃には、カーヤは料理にひと区切りつけていたみたい。いつの間にかあたしのうしろに立っていた。
「ユーナ、行ってくれば? あたしの方はいいから」
「カーヤ……」
「朝飯がまだなのか。だがそれより早く会いたいんだろ? なあに、あいつはまだ寝てるかもしれないが、おまえの顔を見たら飛び起きるさ」
 ……なんだかあたし、自分がどうしたいのかぜんぜん判らなくなってしまっていたの。リョウが帰ってきたこと、理屈で考えたら嬉しくないはずなんかないのに、リョウに会いに行くために歩き始めることができなかった。こんな時、いつものあたしだったら、たとえランドやカーヤが引き止めたってぜったい宿舎を駆け出していたのに。気がついたらあたし、リョウに会いに行けない理由の方を数え上げていたんだ。
「リョウはまだ寝ているの?」
「ああ、たぶんな。だけど構うことはねえよ。オレのことは叩き起こしたじゃないか」
「でも、昨日遅く帰ってきたんだったら、獲物をさばいてもらったり、そういう用事はまだよね」
「毛皮と角だけだからさばくも何も……。ユーナ、おまえ、リョウに会いたかったんじゃないのか?」
 ランドはあたしの様子に気が付いて、あからさまに不審そうな表情をして見せた。
 あたしは、あんなに会いたかったリョウに自分が会いたくないと思っている理由が判らなくて、いつまでも立ち尽くしていた。