続・祈りの巫女68
 ランドは宿舎までちゃんと送ってくれたから、あたしはランドにきちんとお礼を言って、部屋でまだ寝ないで待っていてくれたカーヤにも簡単に報告した。カーヤはそのまま眠ってしまったけど、あたしはカーヤを起こさないように1人で準備をして、神殿でリョウの無事を祈ったの。北の山へ行ったのなら、リョウはそんなに早くは帰ってこないから。山へ入るだけで2日、3日目から北カザムの群れを探し歩いて、ものすごく運がよくて早く狩りが成功しても往復5日はかかるんだって、ランドは話してくれたんだ。リョウは北の山に入るのは初めてだったから、群れの位置がそんなに早く判るとも思えないし、たぶん10日くらいは帰ってこないだろうっていうのがランドの予想だった。
 あたしは、リョウの狩りの成功は祈らなかった。ただ、リョウの無事だけをずっと祈りつづけた。狩りが早く成功すればそれだけ早く帰ってきてくれるけど、成功するかしないかはリョウの問題だったから。リョウは自分の力を試しに行ったんだ。だからあたしはそれを邪魔しちゃいけない。ランドも、夏の初めのほうが真夏よりもずっと狩りがしやすいんだって教えてくれたから、あたしはリョウを信じて待っていることにしたの。
 でも、リョウが本当に北の山に行ったのか、それともこの村から出て行ってしまったのか、心の片隅であたしは疑っていた。どうしてリョウは何も言わないでいなくなったんだろう。北の山へ行くんでも、村から出て行くんでも、ひとことあたしに言ってくれたらこんなに心配しなくて済んだのに。
「 ―― どうしたの? なにか心配事?」
 気がつくと、そこは神殿下の書庫で、あたしはタキに顔を覗き込まれていた。今日からあたしは、セーラの日記をタキに読ませてもらっていたんだ。
「あ、ううん、なんでもないの。ちょっとボーっとしちゃったみたい。ごめんなさいタキ」
「オレのことはいいんだけどね。もしかして祈りの巫女、昨日ちゃんと寝てなかった?」
「ちょっとだけ夜更かししちゃったの。でも大丈夫よ。続けましょう」
 タキはそれ以上訊かなかったけど、ちょっといぶかしそうにあたしを覗き込んでいた。