続・祈りの巫女63
「今までリョウが2日くらい帰ってこなかったことってなかったの?」
「ないわ。カーヤだって知ってるでしょう? リョウはほとんど毎日あたしの宿舎にきてくれてたのよ」
「そうだったわね、ごめんなさい」
 カーヤは苦笑いを浮かべて軽く会釈をした。今まで1度もリョウが帰ってこないなんてなかったから、あたしはこんなに心配してるの。
「どうしようカーヤ。リョウはもしかしたらずっと帰ってこないかもしれないわ」
「そんなことないわよ。リョウがユーナに何も言わないでいなくなる訳ないじゃない」
「でも! マイラが言ってたんだもん! リョウみたいな子は大人になると村を出て行っちゃうんだって」
「たとえそうでもユーナにはお別れを言っていくわ。それは信じられるでしょう?」
 カーヤに訊かれたから、あたしはリョウのことを考えた。でもリョウがほんとにあたしにお別れを言ってくれるかどうかなんて、今のあたしにはぜんぜん判らなかった。リョウのことが判らなくなっちゃった。リョウのこと、ぜんぜん思い出せないよ!
「ねえ、ユーナ。リョウは狩をしに行っていなくなったんでしょう? だったら、昨日一緒に狩をしていた人とか、ううん、そのとき一緒じゃなくても、同じ狩人の仲間になら、リョウは何か言ってるかもしれないわよ。何も知らなくても行き先の予想くらいつくかもしれないし。もしも本当にリョウが事故に遭って動けなくなってるなら、いなくなってることも知らせておいた方がいいと思う。誰か、狩人の人に知り合いはいないの? その人に相談してみたらどうかな」
 そうか、ランドなら何か知ってるかもしれない。リョウはここに引っ越してくる前はよくランドと飲みに行ってたもの。あたしに話してくれなかったことでも、ランドになら何か話しているかもしれない。
「カーヤ、ありがと! あたし、ランドの家にいってみる!」
 そうしてあたしが再び宿舎を飛び出していこうとしたら、うしろからカーヤに呼び止められたの。
「ちょっと待ってユーナ! ちょっとだけ。今、灯りを用意するから。……こんなに夜おそく他所様の家を訪ねるのに、それ以上汚れたら失礼だわ。家に入れてもらえなくなるかもしれないわよ」