続・祈りの巫女59
 このところお日様が沈むのがだんだんゆっくりになってきて、昼間の長さが長くなっていた。でも、それにしてもカーヤがあたしを夕食に呼んだ時間は、いつもよりもずいぶん早い気がしたの。今日はあたしも気をつけていて、お昼ご飯だってちゃんと食べることができたから、あたしの身体を気遣ってくれた訳でもないみたい。テーブルにお皿を運び終えてにっこり笑いかけるカーヤに、あたしはあたりを見回しながら訊いてみた。
「今日のお夕飯、こんなに早いの?」
 今はまだ夕方にも早い時間で、このまま食事を終えたとしても、まだ十分外を歩き回れそうな感じだった。
「ちょっと時間を変えてみたのよ。かまわないでしょう? お勉強ばっかりでユーナもお腹が空いたでしょうし」
 カーヤがそう言ったから、あたしはまたセーラの物語の感動がよみがえってきて、お夕飯のことでカーヤを追求する気持ちがすっかり消えてしまっていた。食卓でカーヤの夕食を頬張りながら、息もつかない感じで話し始めたの。
「今日ね、やっとセーラの物語が読み終わったのよ。最後がすごく感動的だったの」
「ほんと、おめでとうユーナ。頑張ったわね」
 それから食事の間はずっとセーラの物語をカーヤに話しつづけて、食べる方がお留守になってちょっと時間もかかっちゃったけど、やっと食事も終わりかけていた。そのとき、あたしの話が一段落ついたのを見計らって、カーヤが静かに言ったの。
「ユーナ、もしかして気付いてない? 今日はリョウがきてないのよ」
 カーヤに言われなくてもあたしも気付ていた。でも、あたしには今日はリョウがこないだろうって判ってたから、そんなに気にはしてなかったんだ。リョウは、カーヤの心の傷が完全に癒えるまで、あたしの宿舎にくることはないと思うから。
「リョウはまだカーヤと顔を合わせるのが気まずいみたい。心配しないでカーヤ。そのうちまたきてくれると思うわ」
「ユーナがそうのんきだから心配なのよ。お願いユーナ。今日はあなたの方からリョウに会いに行ってあげて」
 そうして溜息をついたカーヤに、半ば追い出されるようにあたしは宿舎をあとにした。リョウの家への暗くなりかけた道を歩いている間、不意に、カーヤが夕食を早くしてくれた理由を理解していた。