続・祈りの巫女55
 場所を食卓に移して、あたしの分の食事もお皿に盛り付けて、テーブルに向かい合わせに座って食事をはじめていた。もうとっくに夕食の時間じゃなくなってて、そろそろ眠る時間の方に近かったのだけど、あたしたちはゆっくりとあたしが作った食事を味わっていた。
「……あたしね、なんだかすごい勘違いをしてたみたい。あたしはいつも、ユーナと一緒にいるときにしかリョウと話したことがなかったから、リョウは誰にでも優しいんだ、って、思い込んでいたの。今まであたしに微笑みかけてくれてたのも、あたし自身に微笑んでくれてるんだと思ってた。……でも、ぜんぜん違った。リョウは、ユーナに微笑んでいただけだったの」
 あたしは、あたしがいない時のリョウなんて知らない。リョウは、あたしがいる時といない時とで、違う人になってしまうの?
「カーヤ、リョウに何かひどいことを言われたの?」
「ううん、ひどいことを言われたとか、そういうことじゃないの。なんだかうまく説明できないけど、リョウの態度とか視線とか、まるであたしに興味がないみたいだった。……ユーナがそばにいる時は違うの。あたしと話す時にはちゃんとあたしを見て、何か質問をすれば真剣に答えて、微笑んでくれた。リョウにとっては、あたしはユーナの友達で、それ以上じゃないのね。そのことがね、今日はっきりと判ってしまったの」
 カーヤの話だけでは、あたしはリョウがどういつもと違っていたのか、ちゃんと想像することができなかった。
「ねえ、ユーナ。ユーナはリョウのことが好き?」
 あたしは、少しだけ迷ったけれど、カーヤにはきちんと話さなければならないと思って言った。
「うん、大好き」
「それじゃ、もしもリョウを好きな人がいて、その人と結婚した方がユーナと結婚するよりもリョウが幸せになると思ったら、ユーナはその人にリョウを譲ってあげるの? リョウの幸せのために身を引くの?」
「譲ってなんかあげない! そりゃ、カーヤの方がお料理も上手で、あたしよりずっとリョウを幸せにできるかもしれないけど、それだったらあたしも料理を勉強して、その人よりずっとリョウを幸せにできる人になるの。リョウは誰にもあげないんだから!」
 あたしがそう言ったとき、カーヤは苦笑いのような表情を見せた。