続・祈りの巫女47
 あたしは少し臆病になってたみたい。マイラと話したときには、本当のリョウのことを知りたいと思ったのに、母さまと話したあとはなんとなく今のままでもいいような気がしてしまっていた。自分の気持ちにどんどん自信がなくなって、怖くなってしまったのかもしれない。本当のリョウを知ったら、あたしの中からリョウを好きな気持ちがなくなってしまうような気がして。
 あたしはずっとリョウを好きだったから、その気持ちがなくなってしまったら、あたし自身も何かがなくなってしまうような気がしたから。
 そのあと、あたしは母さまに、一緒に暮らしているカーヤのことや、神殿の草むしりのときにタキにしてもらった話、昔の物語のセーラとジムの恋の話なんかを夢中になって話していた。時々お布団を取り込んだり、お茶を入れ替えたりしながら、母さまもあたしの話にずっと耳を傾けていてくれた。あんまり夢中で話しすぎて、あたしはお日様が傾いてきていたことにもぜんぜん気付かなかったの。母さまがそろそろ夕食の支度をしなければって、席を立ってから、ようやくあたしはそのことに気がついていた。
「たいへん、もうこんな時間なんだ。母さま、あたし、帰らなきゃ」
「やっぱりお夕飯は一緒に食べていけないのね。もうすぐ父さまとオミが帰ってくるのよ」
「ごめんなさい。本当は会いたかったけど、暗くなってからだと道が見えないの」
「父さまが帰ってくればランプがあるんだけど……。そうね、あんまり引き止めてもユーナが困るものね。父さまには母さまが伝えておくわ。またいつでも帰ってきてね」
「うん、ありがとう」
 そうして母さまにお別れを言って、あたしはできるだけ急いで、暗くなり始めた道を神殿へ戻っていった。急いだ甲斐があってどうにか真っ暗になる前には神殿に戻ってくることができたけど、この時間だとそろそろカーヤが夕食を作り終える頃で、もうリョウは帰ったあとだってことに気がついた。あたし、またリョウのことすっぽかしちゃったんだ。明日こそは謝らなくちゃって思って、ただいまを言いながら宿舎のドアを開けた。
 だけど、宿舎の中は真っ暗で、カーヤがいるはずの台所には誰もいなくて、それどころか、夕食の支度さえもできていなかったの。