続・祈りの巫女41
 あたしが実家に帰るのは本当に久しぶりのことだった。その前はまだ寒い頃で、この道にもまだ少し雪が残ってたのを覚えてる。神殿は遠いって言ったって半日も歩くわけじゃないんだから、本当はもっと頻繁に帰ってこられるはずなのに。あたしはこのあいだ母さまが帰りがけに言った、またいつでも帰ってきてね、って言葉を思い出して、ちょっと申し訳ない気持ちになっていた。
 風景はあたしが暮らしていた時とぜんぜん変わらない。いつもの道を通って、ドアの前に立つ。ちょっと迷ったけど、ドアをノックすると、すぐに母さまの声が聞こえてきた。ドアを開けて迎えてくれた母さまに、あたしはちょっと照れた笑顔を向けた。
「あら、ユーナ」
「ただいま、母さま」
「まあ、久しぶりね。さ、入ってちょうだい」
 家に入るとそこには籠に入った洗濯物が積んであって、あたしは母さまがお洗濯から帰ったばかりだったことを知った。母さまはあたしのためにお茶を用意してくれようとしたけれど、お茶ならマイラのところでいただいてきたし、母さまの仕事を邪魔するのも悪い気がしたから、いっしょに洗濯物を干すのをお手伝いすることにしたの。
「気を遣わなくていいのよ、ユーナ」
「ううん、いいの。だって神殿ではお洗濯なんかすることないんだもん。たまにはお手伝いしないと忘れちゃうわ」
「そう? それじゃ、お願いするわね。このところ裏のサジンの洗濯物も一緒に洗ってるの。覚えてる?」
「もちろんよ。元気にしているの?」
「最近ちょっと足が弱くなってね。でもまだまだ口は達者よ」
 サジンは近くに住んでいるおじいさんで、もう70歳近くなるのかな。母さまはあたしのお洗濯が減ったから、その代わりにサジンの分を洗ってあげてるんだ。家の外の物干し台に行って、あたしは母さまのお手伝いをしながら、しばらく世間話に花を咲かせていた。お洗濯が思いのほか早く終わったからだろう、いつもよりも早く、母さまはお茶の用意をしてくれた。
 母さまのお茶を味わうのも久しぶりで、あたしは改めて懐かしさのようなものを覚えていた。