続・祈りの巫女39
「ねえ、ユーナ。子供の頃のリョウは、生きていることがとても辛そうだったわ。リョウはきっとこの村では少し変わった子だったのね。だからリョウの両親も、リョウのことはあまり判ってあげられなかった。もちろん精一杯愛情を込めてリョウを育てていたわ。でもね、両親の愛情がどんなに深くても、もともと少し変わった性格を持った子供だったから、両親もリョウ自身も空回りしてしまっていたのね。それは仕方のないことなの。だって、子供は親を選ぶことができないし、親だって子供を選ぶことができないんだもの」
 子供の頃、あたしに意地悪ばかりしていたリョウ。マイラから見たあの頃のリョウは、生きていることがすごくつらかったんだ。今は? 今もリョウはつらいの? そんなつらさをぜんぜん見せないで、いつも穏やかな優しいリョウでいるの?
「シュウが死んで、リョウはユーナのために優しくなろうと思ったのね。でも、そうしているうちにきっと、その方がずっと生きることが楽になるんだってことに気付いたんだわ。優しい人でいる方が人とうまくやっていけるもの。……あたしはシュウの親だから、リョウがいつまでもシュウを引きずっているのだったら、それはすごく悲しいことだと思うの。今のリョウが本当に優しくなって、自分が優しい人でいることに無理をしていないのなら、それはとてもいいことだわ。リョウにとっても、ユーナにとってもね」
「ねえマイラ、今のリョウは昔とは変わったと思う? シュウの真似をして優しくしてるんじゃなくて、本当に優しくなったんだと思う? 無理をしてないと思う?」
「さあ、それはあたしには判らないわ。子供の頃ならいざ知らず、最近はリョウも忙しいから、めったに顔を合わせることもないからね。ユーナが自分の目で確かめてみるといいわ。たぶん、子供の頃の意志が強いリョウが残っていたら、そう簡単に本心を見せたりしないだろうけどね」
 あたしは今日ほんの少しだけ、リョウのことが判った気がしていた。あたしの儀式の時にたった1度、リョウは本当の気持ちを言ってくれた。今のリョウの気持ちは判らない。あたしはやっぱり、リョウにそれを確かめなければいけないんだ。
「マイラ、あたしリョウのことが大好き」
「それは、リョウが優しい人だから?」
 あたしは少しだけ、マイラへの答えを考えた。