続・祈りの巫女37
「ユーナは? まだ恋人はいないの?」
 あたし、また少しからかわれてるのかと思った。でも、マイラはぜんぜんそんな風じゃなくて、どうやら本当にあたしの話を聞きたいみたい。あたしもリョウのことを聞いてみたかったから、マイラがそう言ってくれたのはあたしにとっても都合がいいことだったんだけど。
 なんだかすごく話しにくいの。12歳の頃だったら、リョウのことも素直に話せていた気がするのに。
「……リョウがね、毎日宿舎に話にきてくれるの。でもぜんぜんリョウの気持ちが判らないの」
 マイラは穏やかな表情で微笑んでくれた。
「ユーナはリョウのことが好きなの?」
「……うん、たぶん」
 あたしは12歳の頃、同じことをマイラに訊かれたことがある。あの時はすぐに答えられた。リョウのことが大好きだったから。
 今だってすごく大好きなのに。それなのに、マイラに訊かれてこんな返事しかできないんだ。
 マイラも、あたしの言葉があの頃と違うって、気付いたみたいだった。あたしの顔を覗き込むようにして、慈愛に満ちた表情で微笑んだ。
「ユーナも大人になったんだね。リョウは意志の強い子だから、なかなかユーナに思い切ったことは言えないわ。……ねえ、ユーナ。リョウはまだシュウのことを気にしていそう?」
 マイラに言われて、あたしはあの時のことを思い出していた。あたしが祈りの巫女の儀式を受けた日のこと。あの時リョウは、シュウの死が自分にとってもすごくショックだったんだって、そう言ってたんだ。
「リョウはシュウが死んでからすごく変わったの。ねえ、マイラ教えて。リョウはあの時どうしたの? あんなに優しくなる前のリョウって、いったいどんな人だったの?」
 マイラは、ちょっと辛そうな表情をして、そっと目を伏せた。