続・祈りの巫女35
 ベッドには小さな赤ちゃんが健やかに眠っていた。本当に小さくて、赤くて、まるで人間じゃないみたい。すごく小さな手をしっかり握ってて、よく見るとそんなに小さな指なのに、ちゃんと爪があるの。そんなあたりまえのことにびっくりした。小さくても、この子はもう1人の人間なんだ、って。
「わあ、かわいい……」
 本当に自然に、あたしの口からその言葉がこぼれ落ちていた。眠っていて、少しも動かないのに、あたしはいつまででも飽きずにずっと見ていられそうな気がした。
「ユーナ、ゆっくり見ていってちょうだいね」
 マイラがそう言って動きかけたから、あたしはすぐに立ち上がった。
「あ、いいわマイラ。お茶ならあたしが入れる」
「あらそう? お願いしてもいい?」
「うん、ちょっと待っててね」
 あたしは大急ぎで台所へ行って、お湯を沸かして、マイラに指示してもらいながらお茶の用意をした。そしてまたベッドルームに戻ってくる。あたしが目を離している間も、赤ちゃんはずっと眠ったままで、さっきと少しも変わった様子はなかった。
「ありがとうユーナ」
「あたしがいる間は何でも頼んでちょうだいね」
「嬉しいわ。……この子の名前ね、ベイクと相談して昨日やっと決めたところなの」
 マイラがお茶をすすって一息つく間、あたしは少しドキドキしながら待っていた。
「最初はね、もう1度シュウの名前をつけて、シュウが生きられなかった分もずっと幸せになってもらいたかった。でも、この子はシュウとはぜんぜん違う人間だから、名前も違う名前を付けよう、って話したの。 ―― ライ、っていうのよ」
 マイラが言った名前を、あたしは心の中で繰り返した。