続・祈りの巫女34
 カーヤが作ってくれたおいしい朝食を食べたあと、あたしは山を降りて、マイラの家へ向かっていた。途中、草原に咲いていた花の中から、それほど匂いがきつくない花を選んで摘んで、手土産にする。カーヤの話を聞いてから、なんとなく植物に心があるのがあたりまえのような気がしてきて、あたしは花を摘みながら「マイラの赤ちゃんの心を和ませてね」って自然に口にしていた。花は人が育てたわけじゃないから、もしかしたらすごく怒ってたのかもしれないけど、黙って摘むよりはずっといいことだと思ったから。
 草原を出ると少しずつ家が増えてきて、遠くにあたしが育った家の屋根も見えてくる。すれ違う人はそれほど多くないけど、みんなあたしに声をかけてくれるから、あたしも笑顔で挨拶を返して、やがてマイラの家への坂道が見えてきた。正面にはシュウの森。その手前にある小さな家が、マイラとベイクと赤ちゃんの家だった。
 ノックをして赤ちゃんを驚かせちゃいけないから、あたしは窓から顔をのぞかせて、ちょうど台所に立っていたマイラの背中に声をかけた。
「こんにちわ、マイラ」
 振り返ったマイラはあたしの顔を見ると満面の笑顔で答えた。
「あら、ユーナ。いらっしゃい。すぐにドアを開けるわね」
「あ、いいわ。自分で開けて入るから」
 あたしはドアの方にまわって、できるだけ音を立てないように部屋に入った。マイラは笑顔だったけど、動きが少しギクシャクしていて、歩くのがちょっとだけつらそうだった。あたしがそう言うと、
「これでもだいぶよくなったのよ。シュウの時よりはちょっと大変だったけど」
って答えてくれた。産む時が大変なのは知ってたけど、赤ちゃんて産んだあとも大変なんだ。あたしは改めてマイラにおめでとうを言って、花瓶の場所を教えてもらって、持ってきた花をテーブルに飾った。
「さあ、ユーナ。こっちにきて」
 マイラがベッドルームに案内してくれる。あたしはマイラが指差したベッドに近づいて、そっと、覗き込んだ。