続・祈りの巫女25
「ユーナはその日記の方をずっと読みたいと思ってたの?」
 リョウは少し目を見開いて、強引に作ったような雰囲気の笑顔で言った。あたしがリョウの反応に引っかかって気分を萎えさせてしまったことに責任を感じたのかもしれない。でもあたしは、そんなリョウの心遣いに応えることができなかった。判ってしまったから。リョウはあたしが嬉しいと思ったことをあたしと同じようには喜べないんだ、って。
「……日記のことはね、昨日タキと話していて初めて知ったの。物語はセーラが書いた訳じゃないから、もしかしたら本当のセーラとは少し違うかもしれない。でも日記はセーラが自分で書いたものだから、本当のセーラなの。その日記を読めば、あたしは本当のセーラに会うことができるの」
 リョウは文字が読めないから、物語を読んだことも日記を読んだこともない。だから昔の文章を読むことがどんなことなのか判らなくてあたりまえなんだ。
「そうか。……よかったな、ユーナ」
「うん、ありがとリョウ」
 リョウがあたしの頭をなでる。リョウはいつでもあたしに優しくしてくれる。あたしの話を毎日聞いてくれて、嬉しい時には一緒に喜んでくれる。リョウに判らないことがあっても仕方がないんだ。でも、こんなにはっきり判ってしまったのが初めてだったから、あたしは自分で思ってもみなかったくらい、大きなショックを受けていた。
 そんなあたしの落ち込みは、もしかしたらリョウにもショックを与えたのかもしれない。それからほんの少し会話を交わしただけで、リョウは宿舎をあとにしていた。
 リョウがドアを出て行ったあと、今までずっとあたしたちの様子を見ていたカーヤが言った。
「ユーナ、余計なことかもしれないけど……。男の人と2人で話しているとき、他の男の人の話題は相手にとってはあまり気分がいいものじゃないかもしれないわよ。あたしだったら、好きな男の人に他の女の子の話はできればしてほしくないもの」
 その言葉に、あたしは更に別の意味のショックを覚えていた。