続・祈りの巫女24
 草むしりの日は神殿の全員で川へ身体を洗いに行く習慣だったから、リョウも遠慮して話しにはこなかった。翌日からはまたいつもの生活に戻って、あたしは今までよりもずっと熱心に、セーラの物語を読み進めていった。この物語を読み終えたら、タキはセーラの日記を読ませてくれるって約束した。あたしはセーラの日記が読みたくて、できるだけ早く物語を読み終えてしまいたかった。
 いつもよりも2倍以上ページが進んで、さすがに読み疲れてきた頃、いつもの時間にリョウがやってきた。昨日話していなかったからあたしはリョウに話したいことがたまってしまって、カーヤに呼ばれるのももどかしく、本にしおりを挟んで勉強部屋を飛び出していた。
「リョウ、お帰りなさい!」
「ただいま、ユーナ。元気そうだね」
「うん、昨日ね、タキがセーラの日記を見せてくれるって約束してくれたの。あたし嬉しくて」
 リョウは微笑みながら、少し首をかしげる仕草をした。あたしは昨日は嬉しくてカーヤにも同じことを話していたから、本当ならリョウに説明しなければならないことを知らない間に省いちゃってたんだ。あたしは少し落ち着くようにテーブルについて、1つ深呼吸してから言った。
「昨日ね、草むしりの時にタキと一緒だったの。リョウはタキを知ってる?」
 リョウは記憶を辿るように視線を泳がせた。
「うん、たぶん顔を見れば判ると思う。オレと同じか少し年上くらいの神官だよな。ひょろっとした感じの」
「そう、そのタキ。そのタキがね、あたしが今読んでるセーラの物語の元になった、セーラの日記があるって教えてくれたの。それでね、物語を読み終わったら、セーラの日記も読ませてくれるって、約束したの」
 あたしはまだ少し興奮気味に話していたのだけど、リョウにはあたしが興奮している気持ちが判らないみたいだった。ちょっと首をかしげて、相変わらず微笑んだままだった。そんなリョウを見ていたらあたしも少し気分が萎えてしまったみたい。今まですごく嬉しかったのに、セーラの日記を読めることがあまりたいしたことじゃなかったような気がした。
 そんなあたしの表情の変化を、リョウも感じたみたいだった。