続・祈りの巫女19
「情がこわいな、祈りの巫女は」
 タキが半分笑いながらからかうように言って、あたしは再び顔を上げてタキを見た。タキの笑顔の中にはあたしに対するほほえましさのようなものが混じっていて、あたしはまた子供扱いされてることを感じていた。ちょっと腹が立ったけど……あたしが子供扱いされるのって、もしかしたら自分が悪いのかもしれないって思い直した。リョウはカーヤを子供扱いしたりしない。こんな時、カーヤだったらきっと素直にタキに甘えていたから。
「ごめんなさい。あたしが倒れたらタキに迷惑をかけるのよね。タキの言う通りゆっくりやるわ」
 あたしがそう言って微笑んだら、タキの様子がみるみる変わって、あたしの方が驚いてしまった。
「……んまあ、なんにでも一生懸命なのは祈りの巫女のいいところでもあるんだけどね」
 あたしの視線を避けるように目を伏せて、口の中でぼそぼそと言ったあと、あたしに背を向けてまた草むしりを始めてしまったの。これって、あたしにはすごく新鮮な驚きだった。だって、タキはぜったいあたしをからかうつもりだったはずなのに、それが途中からできなくなっちゃったんだもん。
 こんなに簡単なことだったんだ。それが判ったあたしは嬉しくて、自然に顔がほころんでいた。そうしてニヤニヤしながらしばらく無言で草むしりを続けていたら、やがてタキがまた話し掛けてきた。
「2代目祈りの巫女の物語を読んでるの?」
 タキは微笑んでいたけれど、もうあたしをからかうつもりはないみたいだった。
「うん、セーラの物語ね」
「3年くらい前だったかな、オレも清書を手伝ったよ。今祈りの巫女が読んでる中にはオレが書いたページもあるんだ」
「え? そうなの?」
「12代目の祈りの巫女が読む本だから心をこめて慎重に書くようにって、何度も言われたな。オレにとっても初めての清書だったし。だから楽しみだった。君があの本を読んでくれる日がくるのが」