続・祈りの巫女18
 翌日は毎年恒例の草むしりの日だった。神殿や宿舎の周りの雑草を、巫女と神官が総出できれいにするの。あたしは今年で2回目だった。朝から日よけの帽子やシャベルを用意して、神殿前の広場にみんなで集まった。
 少しの説明を受けて、担当の場所を教えてもらって、あたしは守りの長老が住む宿舎の裏手に向かう。その場所の担当はあたしのほかには神官のタキ。たぶんリョウよりも少し年上くらいで、主に昔の書物を新しく書き直す仕事をしている神官だった。
「よろしく祈りの巫女」
「こちらこそ。がんばろうね」
「向こうの端から一緒にやっていこうか」
 あたしはタキの指示に従って、タキの隣で地面を掘り返し始めた。まだ朝も早くて神殿の全体が山の陰になってるからそれほど暑くは感じない。でも、ここはもともと日が当たる場所だったから、雑草もけっこう長く伸びていて、シャベルを使っても引き抜くのは大変だった。隣のタキは慣れてるみたいで、見る間に土の見える範囲を広げている。あたしも負けないように一生懸命草を抜いた。だって、あたしがちゃんと頑張らなかったら、タキにも迷惑をかけることになるんだもん。
 ふいにタキは顔を上げて、そんなあたしの様子を見て笑った。
「祈りの巫女、そんなに飛ばすと夕方まで持たないよ。もっとゆっくりやればいいよ」
 タキの言葉で、あたしは去年のことを思い出した。初めて草むしりに参加したあの時、あたしはお日様の熱さに耐えられなくて、午後にはフラフラになって日陰で休ませてもらったんだ。
「タキの方がずっと早いわ。タキにばっかりやらせてたらサボってるみたいだもん」
「そんなこと誰も思わないよ。それより、祈りの巫女がまた倒れたら、オレが無茶させたみたいじゃないか。いいからゆっくりやりなって。祈りの巫女の分もちゃんとオレが引き受けるからさ」
 あたしは、タキの心遣いが嬉しくもあったのだけど、やっぱりなんだか悔しかった。あたしだってちゃんと一人前の巫女なんだもん。タキに子供扱いされている気がして、あたしはタキに返事をすることも、手を休めることもできなかった。