続・祈りの巫女16
 騎士があたしを守ってくれる。あたしには騎士がいるの? セーラにジムとアサがいたように、あたしにもあたしを守ってくれる騎士がいるの?
「守りの長老、それは……」
 考えたこともなかった。祈りの巫女には騎士がいることがある。でも騎士はいつでも2人揃っている訳じゃないし、歴史の中には騎士がいない祈りの巫女の方が多いんだ。あたしに騎士がいるなんて、今まで思ってもみなかったことなのに。
「あたしには騎士がいるの? それは誰……?」
 守りの長老は答えてはくれようとはしなかった。沈黙を破ったのは神託の巫女だった。
「祈りの巫女、騎士の存在は誰も知らないのよ。もちろん私は知ってるけどね。あなたには教えられないわ。理由は判るでしょう?」
 騎士は、その時がくるまで、自分が騎士であることを知ってちゃいけない。その理由は判らないけど、あたしがそれを知ってると、騎士に自分が騎士であることを悟られてしまう。だからあたしは騎士の存在を知ってちゃいけないんだ。
「守りの長老、その話は祈りの巫女には内緒だって言ったでしょう?」
 神託の巫女に叱責されて、守りの長老は黙り込んでしまったけど、あたしはなぜ守りの長老が禁を破ったのか、なんとなく判った。
 あたしの宿命を背負うことは誰にもできないけど、同じ宿命を背負った人がほかにもいるんだよ、って、守りの長老はそう言ってくれようとしたんだ。
「守りの長老ありがとう。守りの長老は前にも言ってくれたわ。ユーナの命があることを神に感謝しよう、って。あの頃からみんな災いのことを知ってたのね。あたしの命は、ここにいるみんなの希望なんだわ」
 あたしの命は一度消えかけた。幼いあの日、シュウが助けてくれた命。あたしの命がある限り希望は消えない。もしかしたら、シュウこそがあたしの騎士だったのかもしれない。
 シュウは今でもあたしを守ってくれる。そう信じてるのは悪いことじゃないよね。自分ひとりだけ、シュウを騎士と呼んでも。
 祈りの巫女の誕生が災いを運んでくるんじゃないんだって、あたしはそう信じていたかったのかもしれない。