続・祈りの巫女14
 守りの長老の家は神殿の左側、神官の宿舎が並んだ奥にあった。カーヤは明かりを持ってドアの前まで送り届けてくれたけど、呼ばれていたのはあたしだけだったから、そのまま引き返していってしまった。ドアをノックすると、中から守護の巫女がドアを開けてあたしを迎え入れてくれる。部屋の中には守護の巫女と神託の巫女、そして、奥に守りの長老が座っていた。
 守りの長老は神殿の神官の最高位で、最高齢でもある。たぶん60歳は超えてるんじゃないのかな。巫女で同じ位置にいるのが守護の巫女で、こちらはまだ40台くらい。神託の巫女は30台くらいで、名前がある巫女や神官の中では、当然あたしがいちばん若い巫女だった。でも今の神託の巫女は20台の頃に巫女を継いだから、巫女の中では出世が早い方だった。
 大きなテーブルのいちばん向こうに守りの長老がいて、その左に守護の巫女と神託の巫女がついている。あたしは促されて、長老に向かって右側の席に腰掛けた。
 最初に口を開いたのは、あたしの正面に座った守護の巫女だった。
「祈りの巫女、突然呼び出したりしてびっくりしたでしょう?」
 あたしは素直にうなずくことで答えた。
「でも、そんなに緊張しなくていいわ。今日は、祈りの巫女が儀式を受けてから1年余り経って、巫女としての生活にも慣れてきただろうし、少し神殿の現状について話をするだけだから。あまり深刻に取らないで聞いてちょうだいね」
 守護の巫女の声は穏やかで、あたしは少しだけ緊張を解くことができた。あたしが視線を移すと、神託の巫女も微笑んでくれた。2人とも、あたしが若い巫女だから気を使ってくれてるんだ。あたしもしっかりしなくちゃ。そう思って、2人に微笑みかけた。
「実はね、ここ……もう30年くらい前からだけど、神託の巫女が行う誕生の予言の中にある予兆が見えるようになってきたの。あなたが生まれたのが14年前で、その予兆は現実味を帯びてきた。祈りの巫女がその時代に必要とされて生まれてくる巫女だからよ」
 この1年間、ずっと祈りの巫女の勉強をしてきて、あたしにもわかった。あたしは何かの災いを回避するために生まれてきたんだ、ってこと。
「神託の巫女の予言に含まれるのは、死の予兆。たくさんの人がある同じ時期に死を迎える予兆なの」