続・祈りの巫女13
 あたしが祈りの巫女になってから、リョウは毎日話しにきてくれるようになった。それまでのリョウはなんだかそっけなくて、あたしが話し掛けてもいつも忙しそうにしてたから、毎日きてくれるようになったのがすごく嬉しくて、その日勉強したことや、誰かと話したこと、たくさんリョウに話した。リョウがそばにいるのが楽しくて、リョウがいろいろ話してくれるのが嬉しくて、リョウが来てくれるのが毎日の楽しみだった。リョウの家を建てる時にみんなで手伝いに行った。あたしはお弁当を作るくらいしかできなかったけど、でもリョウのために役に立てるのがすごく嬉しかった。
 今でも毎日リョウは来てくれる。あたしの話を聞いてくれて、あたしにいろいろ話してくれる。前と同じなのに、前ほど楽しくないの。あたし欲張りなのかな。1つ願いがかなったら、今度は次の願いをかなえたいと思っちゃうの。
 大好きなリョウの1番になりたい。リョウが1番好きで、1番大切にしてくれる女の子になりたい。誰にでも向ける優しさじゃなくて、あたしだけに向けてくれる優しさが欲しい。だって、リョウはカーヤにも同じように優しいんだもん。カーヤに優しく笑いかけてるリョウを見るのが、なんだかすごく悔しいと思うの。
 あたしだけのリョウを願っちゃいけないのかな。それって、あたしのワガママなのかな。誰にでも優しいのがリョウだから、そんなリョウのことを好きになったあたしは、リョウがほかの人に優しくするのも我慢しなきゃいけないのかな。
 それとも、リョウがあたしに優しいのも、ほかの人への優しさと同じなのかな……
 あたしがそうして考えつづけてた時、遠慮がちにドアがノックされて、小さく開かれたドアからカーヤが顔をのぞかせた。
「ユーナ、……よかった、1人ね」
 あたしは気分を切り替えて、カーヤに笑いかけた。
「どうしたの? リョウはもう帰ったわよ。入ってくるのに遠慮なんかしなくてもいいのに」
「深刻な話をしてるかと思ったのよ。……実はね、守りの長老がユーナを呼んでるの。夕食がまだなんだって言ったんだけど、そんなに時間は取らせないから、って」
 カーヤの言葉で、あたしはその話が今朝の神託の巫女の話と関係があることを、おぼろげながら察していた。