続・祈りの巫女8
 マイラも赤ちゃんも疲れていたから、落ち着いた頃にまた来ることを約束して、あたしは神託の巫女と一緒にマイラの家を出た。帰り道で神託の巫女はしばらく話をしようとしなかったから、沈黙の中で少しずつ実感が湧いてくる。あたしはマイラの幸せを神様にお祈りして、その祈りはかなえられたんだ。あたしはやっと、祈りを本当にすることができたんだ。
 あたしはこのときシュウの命をも償うことができたような気がしていた。あたしを助けて死んでしまったシュウの命を、新しい命で償うことができたんだ、って。
 村の反対側のはずれを通り過ぎて、道が上り坂に変わる頃、ようやく神託の巫女が口を開いた。
「祈りの巫女、あなたには話しておかなければならないかもしれないわ」
 神託の巫女の声はあたしが想像してたよりもずっと苦しそうで、振り返って驚いてしまった。神託の巫女にはマイラに予言した時の明るい表情なんて微塵もなかったから。
「……どうしたの? あの子に何か悪いことがあるの?」
 目を伏せて、神託の巫女は悪い考えを追い払うように首を振った。
「いいえ、生まれた子には何もないわ。私の予言も嘘じゃない。……ごめんなさい。今日のことを守りの長老に報告して、判断を仰いでみる。遅かれ早かれ祈りの巫女は知らなければならないことだもの」
 それきり、神託の巫女が具体的には何も言わなかったから、あたしはよけいに不安になっていた。そんな気分のまま神殿に帰り着いて、宿舎のドアを開けると、待ちかねたようにカーヤがあたしを迎えてくれた。
「ユーナお帰りなさい。それでどうだった? マイラの子供は?」
 あたしは半分笑顔を作るようにしてカーヤに答えた。
「もうすごくかわいかったわ。男の子でね、マイラやベイクよりもずっと長生きして、オミの娘と結婚するんだって。もうびっくり! ……って、これは誰にも言っちゃだめよ。神託の巫女の予言は両親だけの秘密なんだから ―― 」
 カーヤに明るく話しながらも、あたしはさっき神託の巫女が言ったことが気になって、しばらく頭から離れなかった。