続・祈りの巫女6
「祈りの巫女いる? マイラの子供が生まれたわ」
 ドアの向こうから声がして、あたしがドアを開けるのを待ちきれなかったように顔を覗かせたのは、あたしがずっと待ち続けていた神託の巫女だった。
「ああ、よかったいたわね。すぐにマイラの家に行くから支度して」
「それで? 男の子女の子?」
「まだ聞いてないわ。そんなこと慌てなくてもすぐに判るわよ。先に行っててもいい?」
「待って! あたしも行く!」
 食事の途中だったからカーヤに一言ごめんなさいを言って、あたしは飛び出すようにドアを出た。神託の巫女に遅れないように坂を降りていく。神託の巫女は、子供が生まれるとすぐに食事の途中だろうが眠っている時だろうがかまわず呼ばれて、生まれた子供に関する予言をする。彼女は山道を駆け下りることにも慣れてるみたいだった。どうしてもあたしは遅れがちになって、坂の勾配が緩やかになる頃にはもう、神託の巫女の姿は見えなくなってしまっていた。
 マイラの子供が生まれたことがすごく嬉しかった。でも、同時に少し不安にもなっていた。もしもまた長く生きられない子供だったらどうしよう。1人目のシュウのように、幼くて死んでしまうことが判ってる子供だったら。
 シュウは、あたしの命を救うために死んでしまった。だからあたしは、今度こそぜったい、マイラに幸せになってもらいたいのに。
 走りながらもう一度神様に祈った。どうかマイラの子供が、マイラ夫婦よりもずっと長生きして幸せになりますように、って。
 そうして走り続けて、やっと村のはずれが近づいてきた。マイラの家は森の近くで、神殿からいちばん遠いの。息を整えながらドアをノックすると、手伝いにきていた女性たちの1人がドアを開けて、あたしを招き入れてくれた。
 部屋の中には2人の女性とベイク、ベッドにはマイラが疲れた表情で横になっていた。そして、生まれたばかりの赤ん坊を抱きながら、神託の巫女が目を閉じて立っていた。
 あたしが目をやると、マイラは誇らしそうな、でも少し不安そうな目で、あたしに微笑んだ。