続・祈りの巫女7
 神託の巫女の集中を妨げないように、誰もが無言で、赤ん坊すらも泣き声を上げなかった。あたしはまだマイラにおめでとうも言えなかったし、生まれた子供が男の子なのか女の子なのかも聞けなかった。しばらく沈黙の時間が続いて、やがて神託の巫女が静かに語り始めた。
「……大丈夫よ。この子はベイクよりマイラより、ずっと長生きするわ。結婚相手はまだ生まれてないから名前は判らないけど……あら、偶然ね祈りの巫女、結婚相手はあなたの弟のオミの娘よ。少し年は離れてるけど、ちゃんと子供も生まれるわ。仕事も持って、幸せに暮らせるわ。安心してマイラ、ベイク」
 当然のことだけど、あたしは神託の巫女が予言するところを見たのは生まれて初めてだった。予言の言葉を聞いて、自然にベイクがマイラを抱き寄せた。この2人がどれほど安堵したか、言葉がなくても知ることができる。胸が詰まるみたいだった。
 いつの間にかあたしは涙を流してたみたい。かすんでしまった風景の中で、神託の巫女はベイクに赤ん坊を手渡した。
「ありがとう、神託の巫女」
「ありがとう……」
 まるで夢の中のようだった。幸せに微笑みあうマイラとベイク。今の2人の姿は、あたしが神様へ祈りながら、ずっと脳裏に描きつづけてきたそのままだったから。
「ありがとう、ユーナ」
 ベイクから赤ん坊を引き継いだマイラが言って、あたしを驚かせた。マイラは目に涙を浮かべて、でもすごく幸せそうに笑っていた。
「おめでとう、マイラ。よかったね」
 胸がいっぱいでそれだけしか言えなかったけど、マイラにはあたしの気持ちが判ったみたい。シュウの分まで幸せになるといいね。そんなあたしの心の声に、マイラが答えてくれた気がした。
「すごく大切に育てるわ。……この子の命は、ユーナとシュウにもらった命だもの」
 その時あたしは、今まで胸につかえていたものが、一気に解き放たれたような気がした。