続・祈りの巫女5
 リョウは17歳で、あたしが小さな頃からずっと遊んでくれた男の子。近くに住んでいて、6歳までは大っ嫌いないじめっ子、そのあとはいちばん優しくて大好きな人になった。あたしは祈りの巫女になって、神殿の専用の宿舎に住むようになったけれど、あたしよりも少し遅れてリョウも独立した。そのリョウの今の家は神殿から少し山を降りた森の中だった。
 あたしはリョウが大好きだった。だからカーヤが言うようにリョウの恋人になれたらいいと思ってた。セーラがジムに恋してたみたいに、あたしもリョウに恋してるのかもしれない。
「……リョウの気持ちはリョウのものだもん。祈りで変えたりできないのよ」
「でも、リョウに言われたんでしょう? 一緒に住みたい、って。それってあたしにははっきりプロポーズに聞こえるんだけど」
 そう言ってカーヤがからかったのは、あたしが祈りの巫女の儀式を終えた日の出来事だった。その時はリョウの家は整地もまだで、切り開かれた森の真ん中でリョウがあたしに言ったの。「オレがこの家に一緒に住むのはユーナに決めてる」って。あたしはその時まだ13歳で、このリョウの言葉がプロポーズだなんて思えなかったけど……
 祈りの巫女になって、カーヤとたくさん話しているうちに、あたしも気付いた。独身の男の人と女の子とが一緒に住むのって、結婚以外に考えられないんだ、って。
 リョウはあの時、あたしにプロポーズしたのかもしれない。あの時はそのことに気付かなくて、あたしもリョウに大好きだって言って、リョウは判ってるって言ったんだ。
 でも、それからのリョウの態度はそれまでとほとんど変わらなかった。もちろんリョウ自身がぜんぜん変わらなかった訳じゃなくて、あの頃よりもずっとたくましくなったし、どんどんかっこよくなっていったけど。
「たぶんリョウはプロポーズのつもりなんかなかったと思う。だってあたし、まだぜんぜんリョウにふさわしくないもん」
「そうね、ユーナはまだ14歳だものね。結婚を決めるにはちょっと早すぎるわね」
 カーヤがそう言ったとき、突然誰かが宿舎のドアをノックしたから、あたしは驚いてしまった。