続・祈りの巫女4
「ユーナ、朝ご飯ができたわよ。食べましょう」
 カーヤの声が聞こえたから、あたしは現実に引き戻されて、本にしおりを挟んでから部屋を出た。とたんにスープのいい匂いが飛び込んでくる。あたしはものすごくお腹が空いてたことに気がついた。
「わあ、ジャガイモのスープね。おいしそう。いただきまーす」
「少し熱いかもしれないから気をつけてね」
「うん、ありがと」
 カーヤはすごく料理が上手だった。スープとハムの入った卵焼きとライスだけの簡単な食事なのに、あたしが自分で作るのとはぜんぜん味が違うの。向かい合わせに食卓について、おいしい食事を頬張りながら、あたしはさっきまで読んでいた物語の話を始めた。
「今ね、セーラがジムに片思いしてるところなの。すごく一生懸命なのよ。でもね、セーラの気持ちがなかなかジムに伝わらないの」
 カーヤは祈りの巫女の物語を読んだことはないみたい。過去に巫女はたくさんいたから、カーヤは歴史の流れを勉強することが必要で、あたしみたいに1つの物語をじっくり読むことなんてできないんだ。
「ジムって、セーラの騎士の1人なんでしょう? それなのに片思いなの?」
「セーラが13歳の頃は、ジムが騎士だってことはまだ誰も知らないの。だからセーラは、ジムが騎士だから好きになったんじゃないの。1人の男の子として好きになったのよ」
「祈りの巫女でも自分の恋は自由にならないんだ。ちょっと不思議な感じね」
「自由になんてできないのよ。だって祈りの巫女は、自分のことは祈っちゃいけないんだもん」
 自分のことは、すごく強い想いになる。その想いが強ければ強いほど、祈りの力も強くなる。そんな強い力で祈るのはよくないことなんだ。だから祈りの巫女は、ほかの人のことを祈るのはできるけど、自分のことを祈るのはできないことになってるの。
「それじゃユーナは、リョウの恋人になりたい、って祈りもできないんだ」
 カーヤにからかうように見つめられて、あたしは下を向いてしまった。