続・祈りの巫女3
 2代目の祈りの巫女は1300年以上前の人で、名前はセーラっていう。ちなみにあたしは12代目の祈りの巫女で、11代目は120年以上も前の人だった。祈りの巫女はほかの巫女と同じ、1つの時代に1人しか生まれないけれど、ほかの巫女が死ぬと次の代の巫女が決まるのとは違って、祈りの巫女がいない時代もけっこう多いんだ。祈りの巫女はそれが必要とされる時代にしか生まれないの。祈りの巫女になる子供が生まれたときに神託の巫女が予言をして、あたしもそうやって祈りの巫女になった。
 だから、例えばカーヤは将来、神託の巫女や聖櫃の巫女になる可能性はあるけど、祈りの巫女にはぜったいになれない。この時代には祈りの巫女はあたししかいなくて、あたしが死んでも、次にその子供が生まれるまではまた祈りの巫女がいない時代が続くことになるんだ。
 セーラの時代はすごく特別な時代で、祈りの巫女と命の巫女とが初めて揃って生まれた。命の巫女は祈りの巫女と同じ、神託の巫女の予言で生まれるけど、祈りの巫女よりもずっと少ないの。たぶんまだ3人くらいしかいないんじゃないかな。そんな2人の巫女が揃うこともめったになくて、今のところセーラの時代が最初で最後だった。
 2代目のセーラは、12歳で祈りの巫女の儀式を受けて、17歳で亡くなった。あたしはまだこの物語を読み始めたばかりで、今はセーラが13歳のあたりを読んでるの。今のあたしよりも少しだけ年下の、でもすごく活発で頭がいいセーラ。彼女はジムという青年に恋をしていた。この頃の物語はほとんどジムとの恋物語で、あたしはその恋を自分に置き換えるようにして、物語の世界に入り込んでいた。
 ジムと、もう一人セーラに心を寄せるアサという青年。この2人はのちに騎士と呼ばれることになる。騎士は祈りの巫女と同じ時代に、まるで祈りの巫女を守るように生まれてくることが多いの。ジムが右の騎士で、アサが左の騎士。2人の騎士がきちんと揃うこともあまりないから、本当にこの時代は特別だったんだ。命の巫女にも騎士はついていて、この時代には2人の巫女と4人の騎士が揃った。それはものすごく特別な時代で、その分とても大変な時代だったの。
 セーラは17歳の若さで亡くなってしまった。村を襲った大きな災いを回避するために祈り続けて。あたしは知識ではそれを知っていたけれど、物語のセーラはまだ13歳で、恐ろしい未来を知ることのない、幸せな女の子だった。
 あたしは物語を読みながら、セーラのジムに、リョウの姿を重ね合わせていた。