続・祈りの巫女2
 あたしが儀式を受けて祈りの巫女と呼ばれるようになってから、1年余りが経っていた。あたしは14歳になって、やっと神殿での暮らしにも慣れてきたところ。神殿の宿舎にずっと住むようになって、世話係のカーヤと一緒に暮らしながら、あたしは祈りの巫女についての様々なことを学んでいた。1日のほとんどを勉強に費やして、神殿が空いている時間にマイラのために祈りを捧げて、あたしの1年は瞬く間に過ぎ去っていった。
 あたしが眠れないまま朝を迎えると、カーヤが少し眠そうな顔で起きてきていた。
「おはよう、ユーナ。……どうしたの? 眠れなかったの?」
 宿舎にいるときは、カーヤはあたしをユーナって呼んでくれた。そう呼ばれている時だけ、あたしは自分が祈りの巫女だってことを忘れていられる。あたしはカーヤのことが大好きだった。年下のあたしに仕えているのはあんまり気分がいいものじゃないだろうに、そんなそぶりを微塵も見せないカーヤに、あたしは彼女の意志の強さと限りない優しさを感じていた。
「マイラのことがすごく心配だったの。まだ産まれないのかな。もう産まれていい頃よね」
「ユーナ、子供を産むのって、すごく時間がかかるのよ。大丈夫、産まれたらすぐに神託の巫女のところに知らせがくるんだもの。神託の巫女にはちゃんと頼んでおいたし、すぐに教えてくれるわ。そんなことより出かける支度を整えて待ってないと、知らせが来た時すぐに駆けつけられないわよ」
「そうよね、大変!」
 カーヤに言われて、あたしはすぐに顔を洗いに台所へ行った。カーヤも着替えをして、顔を洗ったあと、朝食の支度を始めてくれる。あたしはなんだか落ち着かなくて、でもカーヤが朝食の支度をしている時間は勉強時間に決めてたから、台所からドアを隔てた勉強部屋で読書を始めた。
 今あたしが読んでいるのは、2代目祈りの巫女の日記を、のちの神官の1人が物語に起こしたもの。あたしの勉強の多くは、そうした昔の物語を読むことだった。
 読み始めて、あたしはすぐに物語りに引き込まれていった。