祈りの巫女49
「さて、そろそろ帰ろうか。あんまりユーナを独り占めしてもみんなに悪いしな」
「どうしよう! あたし、みんなに何も言わないで出てきちゃったよ」
「それは大丈夫だよ。オレがマイラにことづてしといたから」
 リョウは再びあたしの手を引いて、同じ道を歩き始めた。森の中の細い獣道だったから、裾が長い巫女の衣装では少し歩きづらくて、あたしの手を引いたリョウは何度も振り返っていた。
「ここももっとちゃんとした道に整えような。丸太で階段をつけたら歩きやすくなる」
「あたしもお手伝いする!」
「ありがと、ユーナ。でも無理はしなくていいよ。ユーナは今は祈りの巫女になるのに忙しいんだから」
 リョウはやっぱりあたしを少し子ども扱いしていて、儀式を終えて祈りの巫女になったのに、あんまり認めてくれてないみたいだった。ちょっとだけ悔しかったけど、でもそれも仕方がないことなんだな、って思った。あたしはまだ、リョウのことをぜんぶ判ってあげられないから。シュウのことを話していたリョウの言葉もあんまりわからなかった。シュウのことを思い出して、あたしは少しだけ大人になったけど、でも本当の大人になるにはまだまだずっと時間が必要なんだ。
 マイラが言ったみたいに、目の前にあることを1つずつ片付けていくと、あたしは知らない間に少しずつ大人になる。リョウの話す言葉もちゃんとわかって、リョウの悩みを聞いてあげたり、リョウを手伝ったりもできるようになる。そうしたらあたしは、いつかリョウのいちばん大好きな人になれるよね。マイラを幸せにできたら、リョウを幸せにすることもできるよね。
 リョウに、あたしがいるから幸せなんだ、って、思ってもらえるようになるよね。
「ねえ、リョウ。あたし、みんなを幸せにできる祈りの巫女になれると思う?」
 リョウは足を止めて、ちょっとまぶしそうに目を細めて、言った。
「ユーナはいつか、そこにいるだけで誰もが幸せになるような、そんな祈りの巫女になれると思うよ」
 そんなリョウの言葉にあたしは、リョウがあたしを少しだけ認めてくれた気がして、ものすごく幸せな気分になった。