祈りの巫女47
「……オレがほんとにシュウに認められた気がしたのはあの時なんだ。ユーナがまた沼にはまって、オレはユーナを助けることができた。オレはあの出来事が、シュウからオレ達2人への最後のプレゼントだった気がしてならないんだ。ユーナが記憶を取り戻して大人になるため。そして、オレがこれから自信を持って生きていくための」
 ずっと遠くを見つめていたリョウは、このときやっと、あたしを振り返った。
「オレは今やっと、シュウと同じスタートラインに立てた気がする。……ユーナ、オレは、この新しい家に一緒に住むのは、ユーナ1人だけに決めてるんだ」
 あたしはたぶん、リョウが言ったこと、半分も理解できてなかった。リョウの言うことはどこかちぐはぐで、あたしが知ってる現実とはまるでかけ離れていたから。あたしはリョウのことをたくさん好きで、リョウはあたしのことを少ししか好きじゃない。それがあたしの現実だったから、今リョウが言った言葉の本当の意味に気がついたのは、これから先ものすごく時間が経ってからのことだった。
 そんなあたしの混乱は、リョウの目にはどんな風に映ったんだろう。何も答えられないあたしの頭をなでて、リョウは微笑んでいた。
「でも、ユーナはそんなこと、気にしなくていいからな」
 リョウはいったい何を話してるの? もっとゆっくり、あたしがわかる言葉で話してよ。
「これはオレが勝手に決めてることで、ユーナにはぜんぜん関係ないから。ユーナはこれからゆっくり大人になって、誰かに恋をして、その誰かがもしもオレだったとしたら、そのとき初めて考えてくれればいいから」
 リョウ、誤解してるよ。だってあたし、今のあたし、リョウのことがすごく大好きなんだもん。ほかの誰より、リョウがいちばん好きなんだもん!
「あたし、リョウのことが大好き! ほんとよ。ほんとに大好きなの!」
「うん、わかってる」
 そう言ってリョウは、あたしの髪の毛をくしゃっとかき混ぜるみたいにした。花冠はいつの間にかリョウの手に握られてた。わかってるって、リョウは言ったから、あたしはそれ以上何も言えなくなっちゃったけど、あたしにはやっぱり、リョウがあたしの気持ちを少しもわかってないような気がした。