祈りの巫女45
 そう、あたし、たくさんのシュウの夢を見ながら、すごく不思議に思ったことがあったんだ。シュウはいつもいじめっ子からあたしを守ってくれた。そのいじめっ子って ――
「ねえ、リョウ。あの頃のリョウって、もしかしてすごく意地悪じゃなかった?」
 振り返って、リョウは今まであたしが見たこともないような表情で、にやっと笑った。
 そうだったんだ! あたしに意地悪してたいじめっ子って、リョウのことだったんだ!
「やっぱりユーナはそれも思い出してたんだ」
「でもどうして? シュウが死んでからのリョウは、いつもずっと優しかったじゃない。どうしてあの時はいじめっ子だったの? それがどうしてこんなに優しいリョウになったの?」
 あたし、夢の中で思い出をたどりながら、あのいじめっ子がリョウだったこと、しばらく気付かなかった。気付いてからもなかなか信じられなかった。だって、リョウはほんとに優しくて、あんなに意地悪だった男の子と同じ人だなんて思えなかったから。リョウが優しく変わったとき、意地悪だったリョウをあたしは覚えてない。もしも覚えていたら信じられたかもしれないけど。
「実はオレ、このことをユーナに訊かれるのが怖かったんだ。まあでもけじめはきちんとつけとかないといけないし。……つまりね、シュウが死んだことって、オレにとってもかなりショックな出来事だったんだ」
 リョウは遠くを見つめて、今度は少し照れたように話し始めた。
「あの頃、ユーナはシュウとばっかり遊んでた。シュウは優しいから大好きなんだ、っていつも言ってた。オレがユーナと遊びたいと思っても、ユーナとシュウはいつも一緒で、オレが入り込む隙間なんかなかったんだよな。……オレ、あの頃それが悔しくてさ。一生懸命ユーナの気を引こうと思って、ユーナに意地悪してた。オレと遊んだ方がぜったい楽しいのに、って言いたかった」
 ……リョウ、そんなこと思って、あたしに意地悪してたの? あたしの靴を隠したり、髪の毛を引っ張ったり、背中にカエルを貼り付けたりしたの、みんなあたしと遊びたかったからなの?