祈りの巫女44
「そういえばまた言ってなかったな。……ユーナ、祈りの巫女の称号おめでとう。それから、13歳おめでとう」
 そう言ったリョウは今までよりも少し声を低くして、真面目そうに見えたから、あたしも姿勢を正してきちんと答えていた。
「どうもありがとう。これからは、今までよりもずっとがんばって、1日も早く一人前の巫女になります」
「ずっと寝込んでたみたいだけど、身体の具合は大丈夫なの?」
「うん、昨日にはすっかり元気になった。リョウはどうしてきてくれなかったの? あたし、リョウのことずっと待ってたのに」
 あたしがそう言ったとき、リョウはちょっと困ったような表情をした。
「祝い料理の材料を集めるの、思ったより大変だったんだ。村の狩人総出でね」
 リョウに言われて初めて気がついた。あれだけの料理を作るために、リョウたち狩人はものすごくたくさんの獲物を狩らなきゃならなかったんだ。
「ごめんなさい! リョウもほかのみんなも、あたしのためにすごく忙しかったんだ」
「まあね。でも、オレが忙しかったのはそれだけじゃなくてね。……それもこれもぜんぶ言い訳だな。実はオレ、ユーナに会うのが少し怖かったんだ」
「怖いなんてどうして思うの? あたしの何が怖いの?」
 どうしてだか判らなかった。リョウ、あたしと会うのが怖かったの? あたしはリョウを怖がらせるようなこと、ぜんぜん思ったこともなかったのに。
 気が付くと、リョウは今まであたしが一度も見たことがない、あたしには意味がわからない不思議な表情であたしを見ていた。
「ユーナ、シュウのことをたくさん思い出した?」
 リョウにそう言われて、あたしはまたシュウのことを思った。いつも優しくて、いつもいじめっ子からあたしを守ってくれたシュウ。強くて、勇敢で、あたしが大好きだったシュウ。